魔法 世界 の 受付 嬢 に なりたい です。 #魔法世界の受付嬢になりたいです #魔法世界の受付嬢小説100users入り 病人には優しくしましょう

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魔法 世界 の 受付 嬢 に なりたい です

今日も忙しくも変わりないハーレでの仕事ももうすぐ終わりの時間だ。 明日は休みだし、夕飯はじっくりタレを漬け込んで鶏肉の照り焼きをにしよう、とナナリーは小腹が空いていることを自覚した。 受付の上を片付け始めていると、手元に影が出来て誰かが自分を覗き込んでいることに気づいた。 「ご依頼ですか?次の担当の者がもう間もなく来ますので少々お待ちいただけますか?」 「ナナリー・ヘル様。 貴方様にお願いがあり参りました」 夜勤の人に任せようと思ったが名乗ってもいないのに自分を指名されて驚いた。 しかし知らない、しかも身なりがきちんとしている事から貴族とも思える男性に様付けで呼ばれどこか落ち着かない。 「申し遅れました。 私はロックマン公爵家に仕えている者です」 「ロックマンの?」 思い浮かべたのは因縁の相手アルウェス・ロックマン、そしてその父である公爵の顔だ。 なぜ父親の方までよぎったかというと、ロックマンだったら使いの者を出すくらいなら自分で魔法で連絡か自らこちらまで出向いてくるだろう。 過去に公爵からロックマンの内偵のために舞踏会に参加させられた蓋をしておきたかった思い出に想起させられたのだ。 「実はアルウェス様が風邪を引かれまして」 「あいつが風邪?」 ありえないはずだ、とあまりにも怪訝な表情をしていたのか使者の方にぎょっとした顔をされた。 だって治癒術を心得自らにも応用出来るロックマンであれば、身体自体に防御魔法を施している。 今まで一度も風邪を引いたところを見たことなかったし聞いたこともなかった。 「騎士団の仕事が重なりまして、ついに身体のコントロールが不安定になったようです」 「へぇ…あいつが過労ね」 完璧すぎて忘れていたが、魔術師長に就任し、またシュテーダルの騒動の後から魔物が活性化して出動要請が頻発していると、これはニケが愚痴を零していたのだが、人の何倍も仕事をこなしているのだ。 並の人間だったらとうに音を上げているのだろうが、ロックマンは大変さを顔に出すような人間ではない。 だから周りもきっと大丈夫だろうと、当たり前のように仕事を振っていたのかもしれない。 「つきましてはヘル様」 「はい?」 「ぜひお見舞いに来ていただきたいのですが」 「はい??」 業務時間が終わりハーレを出ると使いの人が待っており、あれよあれよという間に馬車に乗せられてしまった。 何気にこの人も押しが強い、とロックマン公爵家は雇ってる人まで強引な人達なのかと顔が引き攣ってしまうのは許してほしい。 別にララに乗って行ってもよかったのだが、今回は隠す必要もないし、招待するのですからとまるで貴族のような待遇となっている。 「あっ、そういえぱお見舞いといえば何か手土産用意した方がよかったのかな」 「とんでもございません。 こちらがお呼びしたのですから、ヘル様ご自身に来ていただけるだけで十分でございます。 きっとアルウェス様もお喜びになりますよ」 「人に弱った姿あんまり見られたくない性格なんじゃないかと思うけどな……」 やけににこにこしている目の前の使者に、あまり期待されては困るなと小さなため息をついた。 ロックマンは普段は騎士団の宿舎で寝泊まりしているが、本格的に体調を崩しいい機会だからと休みを取って自宅で静養しているとのことだった。 「アルウェス様、お見舞いにいらした方をお連れしました」 お願いされてここまで来たのだが、まるで自発的に来たみたいに言われ訂正しようとする言葉を何とか飲み込んだ。 貴族の家であまり行儀の悪いことはしない方がいいだろう。 「誰……?」 「お邪魔するわよ」 「ヘル?」 ロックマンはダブルベッドよりも大きい寝台に、肩までしっかり掛け布団を掛けていた。 ロックマンはナナリーを見るとわずかに目を見開いた。 それでは私はこれで失礼します、と屋敷に入ってから案内してくれた執事は部屋を退出し扉を閉めてしまった。 実家よりも何倍も広い部屋に通され、ロックマンはずっとこちらから目を離さないしとりあえずベッドの傍にある一人がけのソファに腰掛けることにした。 「なんで君がいるの」 「ハーレに使用人が来て、あんたが風邪を引いたから見舞いに来てほしいって言われたの」 「余計な事を」 それがわざわざここまで来た相手に言うセリフかと、ついいつもの癖で言い返そうとしたが、いけない相手はロックマンとはいえ病人だと自分に言い聞かせた。 やはりロックマンが自分を呼んだわけではなかった。 想像していたとおり弱っているところは見られたくないらしく、憮然とした表情をしていてなんと可愛げがないのだろう。 しかし、声は若干掠れており、いつもの饒舌さはない。 頬は赤みを帯びていて汗もかいている。 憮然としているのは、相当に具合が悪いからというのもあったようだ。 額に乗せていたタオルで汗をぬぐおうかと手で触れると、普通の熱とは思えない熱さを感じた。 「ちょっとこれ本当に大丈夫なの!?」 「大丈夫。 少し制御がきいてないだけだから」 今度はタオルを外して額に直に触れると、微力だが魔力が漏れていることが分かった。 つまり、疲労が溜まりちょっとした魔力の暴走状態となっているところで体調を崩してしまったということだろう。 「まったく、無茶するんじゃないわよ」 今度は姿勢を正しくし、前髪を掬い上げ額を手で覆った。 息を吸い上げ呪文を唱えると、接触部分が熱と中和され生温い感触となった。 「魔力吸収の魔法か」 「さすがに知ってるのね」 静かに施しているがこの魔法、実は難しい。 学生時代に習得出来なかった魔法の一つだ。 魔力を吸収し、その魔力を自分の魔力へ変換する。 この変換の工程が難しく特に違う魔法型の相手となると格段に難易度が上がる。 なおかつ術者の魔力の容量が大きくないと今度は自分がペストクライブのような症状を起こしてしまう。 見た目に反しとても繊細なのだ。 「あぁ、やってもらうのは初めてだけどね」 最初は頼まれたから来てやった、というところだったが実際来て正解だったようだ。 魔力暴走は安静にしていれば徐々に解消されていくが、その間は目眩状態が続く。 それは結構辛いものなので、魔力吸収の魔法を使うことでその症状は収まるはずだ。 きっと明日にはすっきりとしているだろう。 「ヘルの、……ナナリーの手のひら冷たくて気持ちいいな」 急に名前で呼ばれナナリーはドキッとした。 名字でなく名前呼びになるのは、周りに人がいない時だけだ。 「まっまあね!魔力吸収は魔法型に由来するから!」 動揺により声が上擦ってしまった。 ロックマンは額に添えている手をさらに押し付けるように自らの手を被せてきた。 自分より大きなそれはやはり熱く、少しだけ魔法を強める。 楽になったのかロックマンの表情は先程より柔らかなものとなっている。 決してこの距離感のせいではないと言いたい。 「まさか君が来てくれるとは思わなかった」 「私もあんたのお見舞いに行く日が来るなんて思わなかった」 「ふふっ……そうだね。 そうだったね」 ロックマンは人を惑わせる綺麗な顔で無邪気に笑った。 そんなに嬉しそうにされたら、釣られて笑ってしまうではないか。 「これで貸しひとつね」 「いいよ。 ナナリーからのお願いなら、真っ先に駆け付けるよ」 「ばっ……何言ってるのよ!いいから早く寝なさいってばこの病人!」 今は絶対顔を赤くしてるのを笑われてる!ロックマンから顔を背けてむくれてみせる。 今度は自分が熱を出してしまいそうだ。 「ねぇナナリー、僕病人だから甘えてもいい?」 「何よもう……」 このまま顔を向けなかったら負ける気がして、仕掛け人形のようなぎこちない動きで首をロックマンの方へ向けた。 「名前呼んでくれない?」 それは簡単である意味魔力吸収魔法より難しいものだ。 しかし、今は公に付き合ってると認識されている仲なわけで。 いい加減慣れないと。 「おやすみ、アルウェス」 「うん、おやすみ。 ナナリー」 額に乗せていた手をぎゅっとアルウェスは握ると、そのまま静かに目を瞑った。 [newpage] 懐かしい夢を見た。 あれは、迷子係のお姉さんと一緒に眠った時のことだ。 いきなり見知らぬところに放り出され心細かった僕を助けてくれた、焦げ茶色の髪をした笑顔が眩しい人。 ずっと一緒にいてくれるという約束はさせてもらえなかったけど、彼女からもらった小箱を大事に抱え、横になる僕の目の前には優しく微笑んでくれるお姉さんがいて、とても安心したのを覚えている。 こんな時間がずっと続けばいいのになと、目を閉じたのだった。 瞼の裏がうっすら明るく、目を開けるとカーテンの隙間から朝陽が差し込んでいた。 胸元に心地よい重みを感じ身体を僅かに起こすと、そこには掛け布団に顔を埋め寝息を立てているナナリーがいた。 夢の続きか、と思考を放棄しようとしたところで、昨晩彼女が僕の部屋に来てくれた事を思い出した。 最初はついに幻想でも見えたのかと自嘲していたが、少し気難しいような顔をしている彼女を見てこれは現実だと確信したのだ。 夢に見るナナリーは、いつも僕に屈託のない笑みを向けてくれる。 なんと自分の都合のいいようにすり替えているのだろうか。 現状のような仲になったのは主に自分のせいだというのに。 だが今僕の左手がナナリーの右手を握ったままだというのも現実だ。 滑らかな彼女の手の甲から温かみを感じる。 その感触を楽しむように手の平で包むように撫でた。 まるでお姉さんの右手と自分の左手が離れなくなってしまった時のようだ。 ナナリーが魔力吸収をしてくれたおかげで身体はすっかり楽になった。 魔力暴走が落ち着くのを待つしかないと諦めていたところだったので、予想以上も早い回復を彼女に感謝しなければならない。 揶揄するように氷の魔女、なんて呼ぶ事もあるけれど実際彼女は優秀な魔法使いだ。 今まであまり素直に褒めたことはないけれど、彼女の実力を誰よりも認めているつもりだ。 魔法型が違う、しかも真反対の性質の魔力を吸収出来る人間など知る限りいない。 きっと自分もやろうと思えば出来るかもしれないけれど、氷を受け入れるとなると一つ間違えれば自身を凍らせる事に繋がりかねない。 かといって相殺してしまっては意味がない。 命懸けの魔法となるだろう。 それを彼女は躊躇いもなく、いとも簡単にやってのけた。 これは間違いなく君の勝ちだ。 なんて言ってしまったら、君は満足して僕から離れてしまうかもしれないから、バレていないうちは秘密にしておこうか。 上体を起こし彼女の頭にそっと触れた。 流れる水色の髪を耳に掛けてやると、長い睫毛が少し顔を出す。 すると瞼に力が入り静かに目を開いた。 「ん、あれっここは」 「おはよう、ナナリー」 「お、おはよう……」 最後もごもごと何か言っていたように見えたが、元々消え入りそうな声だったので聞き取れずじまいだった。 上半身だけ突っ伏す形となっていた彼女は、身体を捻りながら起こし痛いと漏らす。 恐らく手を握ったまま寝てしまった僕を起こさないように、ずっと傍にいてくれたのだろう。 ベッドのすぐ横にカートが置かれ、その上に彼女が軽食を取ったと思われる食器とグラスが残されていた。 一晩中こんな近くにいてくれていたというのにずっと寝てしまっていてとても勿体ない気持ちだ。 体調を崩した僕を見舞いに来てくれたのだから寝ていなければならなかった事には変わりないのだが、実に惜しいことをした。 「もう体調は大丈夫なの?」 お陰様で、と返そうとした言葉を飲み込んだ。 「うーん、もう少しだけ休もうかな」 「あっそ。 じゃあ私は」 手を当てて大きく欠伸する彼女の腕を引き込むと、彼女の身体は大きく傾き頭がごつんと僕の胸元でぶつかった。 あいたっと声を上げる彼女の耳元で僕は囁いた。 「まだ眠いようなら、一緒に寝よう?」 ずっと握りっぱなしだった方の手で彼女の指を絡める。 最初は手が開いたまま動かなかったが、徐々に指に力を込め握り返してくれた。 俯いたまま決して頭を上げようとしないナナリーの耳は赤く染っている。 今顔がどうなっているのか想像に容易い。 今日仕事は?と聞いたら休み、と一言だけ。 なら大丈夫だねと呟くと何が!とようやく顔を上げてくれたので、唇をよせ抗議する口を塞いだ。 まだ熱は収まりそうになさそうだ。

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魔法世界の受付嬢になりたいです 2(最新刊)

魔法 世界 の 受付 嬢 に なりたい です

今日も忙しくも変わりないハーレでの仕事ももうすぐ終わりの時間だ。 明日は休みだし、夕飯はじっくりタレを漬け込んで鶏肉の照り焼きをにしよう、とナナリーは小腹が空いていることを自覚した。 受付の上を片付け始めていると、手元に影が出来て誰かが自分を覗き込んでいることに気づいた。 「ご依頼ですか?次の担当の者がもう間もなく来ますので少々お待ちいただけますか?」 「ナナリー・ヘル様。 貴方様にお願いがあり参りました」 夜勤の人に任せようと思ったが名乗ってもいないのに自分を指名されて驚いた。 しかし知らない、しかも身なりがきちんとしている事から貴族とも思える男性に様付けで呼ばれどこか落ち着かない。 「申し遅れました。 私はロックマン公爵家に仕えている者です」 「ロックマンの?」 思い浮かべたのは因縁の相手アルウェス・ロックマン、そしてその父である公爵の顔だ。 なぜ父親の方までよぎったかというと、ロックマンだったら使いの者を出すくらいなら自分で魔法で連絡か自らこちらまで出向いてくるだろう。 過去に公爵からロックマンの内偵のために舞踏会に参加させられた蓋をしておきたかった思い出に想起させられたのだ。 「実はアルウェス様が風邪を引かれまして」 「あいつが風邪?」 ありえないはずだ、とあまりにも怪訝な表情をしていたのか使者の方にぎょっとした顔をされた。 だって治癒術を心得自らにも応用出来るロックマンであれば、身体自体に防御魔法を施している。 今まで一度も風邪を引いたところを見たことなかったし聞いたこともなかった。 「騎士団の仕事が重なりまして、ついに身体のコントロールが不安定になったようです」 「へぇ…あいつが過労ね」 完璧すぎて忘れていたが、魔術師長に就任し、またシュテーダルの騒動の後から魔物が活性化して出動要請が頻発していると、これはニケが愚痴を零していたのだが、人の何倍も仕事をこなしているのだ。 並の人間だったらとうに音を上げているのだろうが、ロックマンは大変さを顔に出すような人間ではない。 だから周りもきっと大丈夫だろうと、当たり前のように仕事を振っていたのかもしれない。 「つきましてはヘル様」 「はい?」 「ぜひお見舞いに来ていただきたいのですが」 「はい??」 業務時間が終わりハーレを出ると使いの人が待っており、あれよあれよという間に馬車に乗せられてしまった。 何気にこの人も押しが強い、とロックマン公爵家は雇ってる人まで強引な人達なのかと顔が引き攣ってしまうのは許してほしい。 別にララに乗って行ってもよかったのだが、今回は隠す必要もないし、招待するのですからとまるで貴族のような待遇となっている。 「あっ、そういえぱお見舞いといえば何か手土産用意した方がよかったのかな」 「とんでもございません。 こちらがお呼びしたのですから、ヘル様ご自身に来ていただけるだけで十分でございます。 きっとアルウェス様もお喜びになりますよ」 「人に弱った姿あんまり見られたくない性格なんじゃないかと思うけどな……」 やけににこにこしている目の前の使者に、あまり期待されては困るなと小さなため息をついた。 ロックマンは普段は騎士団の宿舎で寝泊まりしているが、本格的に体調を崩しいい機会だからと休みを取って自宅で静養しているとのことだった。 「アルウェス様、お見舞いにいらした方をお連れしました」 お願いされてここまで来たのだが、まるで自発的に来たみたいに言われ訂正しようとする言葉を何とか飲み込んだ。 貴族の家であまり行儀の悪いことはしない方がいいだろう。 「誰……?」 「お邪魔するわよ」 「ヘル?」 ロックマンはダブルベッドよりも大きい寝台に、肩までしっかり掛け布団を掛けていた。 ロックマンはナナリーを見るとわずかに目を見開いた。 それでは私はこれで失礼します、と屋敷に入ってから案内してくれた執事は部屋を退出し扉を閉めてしまった。 実家よりも何倍も広い部屋に通され、ロックマンはずっとこちらから目を離さないしとりあえずベッドの傍にある一人がけのソファに腰掛けることにした。 「なんで君がいるの」 「ハーレに使用人が来て、あんたが風邪を引いたから見舞いに来てほしいって言われたの」 「余計な事を」 それがわざわざここまで来た相手に言うセリフかと、ついいつもの癖で言い返そうとしたが、いけない相手はロックマンとはいえ病人だと自分に言い聞かせた。 やはりロックマンが自分を呼んだわけではなかった。 想像していたとおり弱っているところは見られたくないらしく、憮然とした表情をしていてなんと可愛げがないのだろう。 しかし、声は若干掠れており、いつもの饒舌さはない。 頬は赤みを帯びていて汗もかいている。 憮然としているのは、相当に具合が悪いからというのもあったようだ。 額に乗せていたタオルで汗をぬぐおうかと手で触れると、普通の熱とは思えない熱さを感じた。 「ちょっとこれ本当に大丈夫なの!?」 「大丈夫。 少し制御がきいてないだけだから」 今度はタオルを外して額に直に触れると、微力だが魔力が漏れていることが分かった。 つまり、疲労が溜まりちょっとした魔力の暴走状態となっているところで体調を崩してしまったということだろう。 「まったく、無茶するんじゃないわよ」 今度は姿勢を正しくし、前髪を掬い上げ額を手で覆った。 息を吸い上げ呪文を唱えると、接触部分が熱と中和され生温い感触となった。 「魔力吸収の魔法か」 「さすがに知ってるのね」 静かに施しているがこの魔法、実は難しい。 学生時代に習得出来なかった魔法の一つだ。 魔力を吸収し、その魔力を自分の魔力へ変換する。 この変換の工程が難しく特に違う魔法型の相手となると格段に難易度が上がる。 なおかつ術者の魔力の容量が大きくないと今度は自分がペストクライブのような症状を起こしてしまう。 見た目に反しとても繊細なのだ。 「あぁ、やってもらうのは初めてだけどね」 最初は頼まれたから来てやった、というところだったが実際来て正解だったようだ。 魔力暴走は安静にしていれば徐々に解消されていくが、その間は目眩状態が続く。 それは結構辛いものなので、魔力吸収の魔法を使うことでその症状は収まるはずだ。 きっと明日にはすっきりとしているだろう。 「ヘルの、……ナナリーの手のひら冷たくて気持ちいいな」 急に名前で呼ばれナナリーはドキッとした。 名字でなく名前呼びになるのは、周りに人がいない時だけだ。 「まっまあね!魔力吸収は魔法型に由来するから!」 動揺により声が上擦ってしまった。 ロックマンは額に添えている手をさらに押し付けるように自らの手を被せてきた。 自分より大きなそれはやはり熱く、少しだけ魔法を強める。 楽になったのかロックマンの表情は先程より柔らかなものとなっている。 決してこの距離感のせいではないと言いたい。 「まさか君が来てくれるとは思わなかった」 「私もあんたのお見舞いに行く日が来るなんて思わなかった」 「ふふっ……そうだね。 そうだったね」 ロックマンは人を惑わせる綺麗な顔で無邪気に笑った。 そんなに嬉しそうにされたら、釣られて笑ってしまうではないか。 「これで貸しひとつね」 「いいよ。 ナナリーからのお願いなら、真っ先に駆け付けるよ」 「ばっ……何言ってるのよ!いいから早く寝なさいってばこの病人!」 今は絶対顔を赤くしてるのを笑われてる!ロックマンから顔を背けてむくれてみせる。 今度は自分が熱を出してしまいそうだ。 「ねぇナナリー、僕病人だから甘えてもいい?」 「何よもう……」 このまま顔を向けなかったら負ける気がして、仕掛け人形のようなぎこちない動きで首をロックマンの方へ向けた。 「名前呼んでくれない?」 それは簡単である意味魔力吸収魔法より難しいものだ。 しかし、今は公に付き合ってると認識されている仲なわけで。 いい加減慣れないと。 「おやすみ、アルウェス」 「うん、おやすみ。 ナナリー」 額に乗せていた手をぎゅっとアルウェスは握ると、そのまま静かに目を瞑った。 [newpage] 懐かしい夢を見た。 あれは、迷子係のお姉さんと一緒に眠った時のことだ。 いきなり見知らぬところに放り出され心細かった僕を助けてくれた、焦げ茶色の髪をした笑顔が眩しい人。 ずっと一緒にいてくれるという約束はさせてもらえなかったけど、彼女からもらった小箱を大事に抱え、横になる僕の目の前には優しく微笑んでくれるお姉さんがいて、とても安心したのを覚えている。 こんな時間がずっと続けばいいのになと、目を閉じたのだった。 瞼の裏がうっすら明るく、目を開けるとカーテンの隙間から朝陽が差し込んでいた。 胸元に心地よい重みを感じ身体を僅かに起こすと、そこには掛け布団に顔を埋め寝息を立てているナナリーがいた。 夢の続きか、と思考を放棄しようとしたところで、昨晩彼女が僕の部屋に来てくれた事を思い出した。 最初はついに幻想でも見えたのかと自嘲していたが、少し気難しいような顔をしている彼女を見てこれは現実だと確信したのだ。 夢に見るナナリーは、いつも僕に屈託のない笑みを向けてくれる。 なんと自分の都合のいいようにすり替えているのだろうか。 現状のような仲になったのは主に自分のせいだというのに。 だが今僕の左手がナナリーの右手を握ったままだというのも現実だ。 滑らかな彼女の手の甲から温かみを感じる。 その感触を楽しむように手の平で包むように撫でた。 まるでお姉さんの右手と自分の左手が離れなくなってしまった時のようだ。 ナナリーが魔力吸収をしてくれたおかげで身体はすっかり楽になった。 魔力暴走が落ち着くのを待つしかないと諦めていたところだったので、予想以上も早い回復を彼女に感謝しなければならない。 揶揄するように氷の魔女、なんて呼ぶ事もあるけれど実際彼女は優秀な魔法使いだ。 今まであまり素直に褒めたことはないけれど、彼女の実力を誰よりも認めているつもりだ。 魔法型が違う、しかも真反対の性質の魔力を吸収出来る人間など知る限りいない。 きっと自分もやろうと思えば出来るかもしれないけれど、氷を受け入れるとなると一つ間違えれば自身を凍らせる事に繋がりかねない。 かといって相殺してしまっては意味がない。 命懸けの魔法となるだろう。 それを彼女は躊躇いもなく、いとも簡単にやってのけた。 これは間違いなく君の勝ちだ。 なんて言ってしまったら、君は満足して僕から離れてしまうかもしれないから、バレていないうちは秘密にしておこうか。 上体を起こし彼女の頭にそっと触れた。 流れる水色の髪を耳に掛けてやると、長い睫毛が少し顔を出す。 すると瞼に力が入り静かに目を開いた。 「ん、あれっここは」 「おはよう、ナナリー」 「お、おはよう……」 最後もごもごと何か言っていたように見えたが、元々消え入りそうな声だったので聞き取れずじまいだった。 上半身だけ突っ伏す形となっていた彼女は、身体を捻りながら起こし痛いと漏らす。 恐らく手を握ったまま寝てしまった僕を起こさないように、ずっと傍にいてくれたのだろう。 ベッドのすぐ横にカートが置かれ、その上に彼女が軽食を取ったと思われる食器とグラスが残されていた。 一晩中こんな近くにいてくれていたというのにずっと寝てしまっていてとても勿体ない気持ちだ。 体調を崩した僕を見舞いに来てくれたのだから寝ていなければならなかった事には変わりないのだが、実に惜しいことをした。 「もう体調は大丈夫なの?」 お陰様で、と返そうとした言葉を飲み込んだ。 「うーん、もう少しだけ休もうかな」 「あっそ。 じゃあ私は」 手を当てて大きく欠伸する彼女の腕を引き込むと、彼女の身体は大きく傾き頭がごつんと僕の胸元でぶつかった。 あいたっと声を上げる彼女の耳元で僕は囁いた。 「まだ眠いようなら、一緒に寝よう?」 ずっと握りっぱなしだった方の手で彼女の指を絡める。 最初は手が開いたまま動かなかったが、徐々に指に力を込め握り返してくれた。 俯いたまま決して頭を上げようとしないナナリーの耳は赤く染っている。 今顔がどうなっているのか想像に容易い。 今日仕事は?と聞いたら休み、と一言だけ。 なら大丈夫だねと呟くと何が!とようやく顔を上げてくれたので、唇をよせ抗議する口を塞いだ。 まだ熱は収まりそうになさそうだ。

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#魔法世界の受付嬢になりたいです 魔法世界の受付嬢

魔法 世界 の 受付 嬢 に なりたい です

〜もくじ〜• 魔法世界の受付嬢になりたいですのあらすじ 魔法が当たり前にある世界で生まれた ナナリー。 幼い頃、破魔士(はまし)であるお父さんに連れられて来たのは依頼者と請負人を仲介する ハーレでした。 お父さんはナナリーと一緒に出来る畑の仕事を請け帰ってきた時、 ナナリーは受付のお姉さんに釘付けになったのです。 「おかえりなさい」 どんな依頼も顔色変えず、笑顔で送り出し出迎えてくれるお姉さんがナナリーには輝いて見えました。 ナナリーにとって、 やたらと闘争心を掻き立てられる存在です。 その原因はというと、 初対面でいきなりじゃんけんを仕掛けられて負けたこと。 こんなの誰でも「何なんだお前いきなり」って思ってしまいますよね 笑 言い寄ってくる女の子達には紳士な対応をするのに、なぜか ナナリーにだけやたら喧嘩腰なアルウェス。 そのおかげで、ナナリーは勉強でも魔法でもコイツにだけは一切負けたくないと思うようになるのでした。 ナナリーの魔法型は…!? 魔法型とは、火・ 風・ 水 ・氷・地・雷の6に分かれる魔法の種類で血液で分かれるといいます。 授業で生徒一人ずつ順番に魔法型を見ていき、 アルウェスは火の属性だとわかりました。 そして、ナナリーの番。 「セーメイオン!」 シーン 何も起こらないと思ったその時、 マリスが言います。 「ナナリー・ヘル!あなたの髪の毛!!」 ナナリーの髪は水色になり、教室中に雪の結晶が降り始めました。 瞳の色も変わってる…! 血に宿った魔力が覚醒すると、稀に髪色が変わったりする人がいると言います。 そんな稀有な現象が起こった上に、 クラスでは唯一の氷属性。 (こうなったら、氷の魔法を極めて成績一番になってやる!) 相変わらずアルウェスと戦いながら、ナナリーはやがて 成績トップクラスになり夢へと近づいていくことになります! 魔法世界の受付嬢になりたいですの最終回や結末はどうなる? 「魔法世界の受付嬢になりたいです」は2019年12月現在、アリアンローズで連載中です。 ですので、ネタバレとともに最終回の予想をしていきます。 入学から4年が経つ頃にはいがみ合っていた貴族のご令嬢達とも軽口を叩くような仲になり、特にマリスとは一番話すようになっていました。 きっかけは、アルウェスに振られた貴族の子に 氷魔法で作ったお花の置物をプレゼントしたこと。 同じクラスであろうと身分は大事って考えもあるだろうけど、これはただの同級生って感じで良いね! やがてアルウェスとも口喧嘩をする程度になっていき、ナナリーは遂に ハーレへの就職が内定するのです! 就職してもアルウェスとの因縁は消えない…!? 無事ハーレの受付で働けることになったナナリーは、仕事の飲み込みが早く頭の回転が良いと高評価です。 そして、 魔法学校で 常に二位だったことも評価されていました。 でも、おかしい点がいくつかあります。 卒業パーティーではダンス誘ったしね! 少し大人になった2人がまた再会して関わるようになって、だんだん惹かれていくってことになってくれたら嬉しいです! それから今更素直になれない感じがあっても胸キュンがあって美味しいですね。 (「魔法世界の受付嬢になりたいです」は既刊2巻の作品です) 無料試し読みで数十ページ読める電子書籍サイトや1話ごとに課金して読めるアプリ等はいくつもありますが、単行本丸ごと1冊読めるサイトは少ないものです。 そこで当サイトでは、 単行本を丸ごと1冊以上無料で読めるサイトをご紹介します。 漫画の取り扱い状況については後ほどまとめていきますね。 music. jpやU-NEXTは 登録後すぐにポイントが使えるから、今すぐ読みたい人におすすめだよ。 まずはそれぞれの無料お試し期間を利用して、ご自身に合うサイトを見つけてみてくださいね。 ちなみに2019年3月現在、各サイトでの「魔法世界の受付嬢になりたいです」の取り扱いはこのようになっています。 こちらの3サイトは登録時に動画配信サービスのようなポイントはもらえませんが、 月額料金がかからないので、会員登録しておけば 無料漫画もたくさん読めますよ。

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