ゲノム 食品 と は。 ゲノム編集 食品は安全?

【恐怖】ゲノム編集食品が知らないうちに食卓に!TVでは放送されない危険性・問題点

ゲノム 食品 と は

しかし、人間に対するゲノム編集は話が別です。 2018年11月のヒトゲノム編集国際会議に参加した賀氏は、研究の正当性を主張しつつ世界中の研究者からの非難等をかんがみて臨床試験の中断を公表。 しかし、2019年1月には実験に参加した別の1組が妊娠中だということが明らかになりました。 受精卵のゲノム編集による子どもの誕生は多くの国で禁じられています。 賀氏の中国でも、受精卵を使ったヒト胚研究は受精後14日までしか認められていません。 ゲノム編集で親の望む容姿・能力・体質を持った子どもを誕生させることには、深刻な問題が含まれています。 いわゆる「デザイナーベビー」問題です。 デザイナーベビーによって社会をどう変化するかは、アンドリュー・ニコル監督・脚本による映画『ガタカ』(1997年)が示唆的です。 ゲノム編集を行わないのは親の無責任として非難される時代、自然な妊娠・出産による子どもは体質や能力の点から「不適正者」と呼ばれ、下級労働者として生きざるをえない社会になっていました。 差別、裏取引、不適正者・適正者の抱える絶望などが描かれます。 2011年にはNASAから「現実的なSF映画」の第1位に選ばれました。 優生学に関する人類の歴史も重要です。 優生学を実践した社会では、「劣った遺伝子」を持つ人々が生殖を制限されたり、殺害されたりしました。 日本も例外ではありません。

次の

ゲノム編集で夢が実現? 応用事例と倫理的問題

ゲノム 食品 と は

「ゲノム編集技術(ゲノムを思い通りに改変できる技術)」は、生命科学や医学研究の分野で大きなインパクトとともに飛躍的な研究成果をもたらしました。 これまで、遺伝子の改変はその技術上の制約から、限られたモデル動物(動物実験に役立つ動物)のみでしか行うことができませんでした。 ゲノム編集技術はそこにブレイクスルーをもたらし、これまでの技術的な制約を解決し、従来よりはるかに簡単かつ迅速に様々な動物種での遺伝子の改変を可能にしたのです。 そのため、数年後にはノーベル賞を確実に取得するだろうとも言われています。 しかし、その技術の加速度的な発展に議論とデータの蓄積が追い付かず、その大きな「可能性」という光の部分が孕む、「安全性の問題」という影の部分が色濃くなりつつあります。 特に、農学(農業・林業・水産業・畜産業などに関係する学問)や私たちの生活の核となる食事にもたらされる影響は計り知れません。 技術の発展に対する議論の遅れは、各国の規制の足並みの乱れや、消費者への理解をおざなりにしてきた政策にも表れています。 そこで今改めて、「ゲノム編集」という技術について、食の安全というオーガニックの原点に立ち戻り、これがどのような技術で何が問題なのか、そして、私たちはこの技術どどう向き合って行けば良いのかを考えみたいと思います。 そもそも「ゲノム」とは?「遺伝子」や「DNA」とはどう違うの? 「ゲノム編集」とか「遺伝子組み換え」といった言葉をニュースなどで耳にして、何となく意味はわかるけれど、正確な定義やそれぞれの違いはあまりよく分かってないという方のために、「遺伝」とは何か、というところから始めてみたいと思います。 「遺伝」とは親から子へ伝わる特徴のこと まず、 「遺伝」というのは親から子へと伝わるいろいろな特徴のことです。 つまり、 「遺伝情報」とはその特徴の情報を意味しています。 遺伝情報の実体=DNA その遺伝情報の実体がDNA(デオキシリボヌクレオチド)という分子です。 DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の 「塩基」と呼ばれる物質が結合して出来ており、その4種類の塩基の配列のパターンこそが「遺伝情報」です。 では、このDNAの4種類の塩基の配列はいったいどのようなものなのでしょうか。 私たちのカラダの設計図&取扱説明書である「遺伝子」 私たちの身体が形作られ、活動できているのは、タンパク質のおかげです。 前者は「構造タンパク質」呼ばれ、身体を作っている分子のこと。 後者は「機能タンパク質」とよばれ、酵素や抗体など体内で起こる、あらゆる反応を担っています。 DNAの塩基配列は、どんなタンパク質をいつ、どこで、どれくらい作るのかという情報が書かれている、いわば 「私たちの身体の設計図であり取扱説明書」なのです。 そして、タンパク質に関する様々な情報が書かれている(コードされている)塩基配列のことを 「遺伝子」と言います。 例えばヒトでは31億個のDNAが配列しており、その中に25000個の遺伝子があることが分かっています。 「ゲノム」とはその個体が持つ全ての「遺伝情報」のこと 約70億個あるヒトの細胞。 そのすべての細胞は基本的には同じDNAの塩基配列を持っています。 遺伝子に記された身体の設計および取り扱いの全情報、つまり、一つの個体が持つ全ての遺伝情報を 「ゲノム」といいます。 全生物の「ゲノム」を解き明かす装置が誕生 ひとりの人間の遺伝に関する全情報である「ゲノム情報」は、 究極の個人情報であると言えます。 そこにはその人の身体の特徴や能力、病気への抵抗性など様々な身体や健康に関する情報が全て記されているからです。 ヒトの全遺伝子を解読しようとする「ヒトゲノム計画」 「ヒトゲノム計画」は、1990年にアメリカで始まった、ヒトの全ての塩基配列(遺伝子)を解読しようとする研究です。 10年以上の月日をかけて行われ、2003年に完了しました。 その結果、ヒトの全遺伝子数が判明し、どこに、どのような遺伝子が記されているか、さらにはその遺伝子がコードするタンパク質の形や役割が解明され始めました。 生命の設計図の高速解読装置「次世代シーケンサー」の開発 「ヒトゲノム計画」は、世界中に大きなインパクトを与えるものした。 そしてこの「ヒトゲノム計画」をさらに先に進める技術として新たに開発された装置が 「次世代DNAシーケンサー」です。 DNAシーケンサーとはDNAの塩基配列を解読する装置です。 「次世代DNAシーケンサー」はこれまでよりはるかに高速、高精度かつ低価格で塩基配列(遺伝子)を解読できる能力をっています。 そのため、「ヒトゲノム計画」で10年かかったヒトの全塩基配列の解読が、「次世代DNAシーケンサー」を使えばわずか10日間で完了することができます。 また、 解析にかかる費用も数十万円となり、誰でも自分のゲノム情報をこれまでより比較的簡単に入手できるようになりました。 家畜や農産物の生命現象までを解き明かす「次世代シーケンサー」 この「次世代DNAシーケンサー」の使用範囲は生命科学、医学分野にとどまりませんでした。 そして次々と、様々な生物のゲノム情報が解読されていったのです。 そこには、家畜や農作物も含まれており、加速度的に品種改良が進むきっかけとなりました。 「ゲノム情報」とは、先に述べたDNAの塩基配列ですので、見た目にはA、T、G、Cの羅列にすぎません。 しかし、ここにこれまでに積み重ねられてきた遺伝学、分子生物学の知見と、ビックデータを高速で解析する高性能のインフォマティクスの技術が合わさることで、家畜や農作物のすべての生命現象を知ることができるようになったのです。 DNAの突然変異を利用して行われる、農作物や家畜の品種改良 手間も時間もかかる農作物や家畜の品種改良 農作物や家畜における品種改良とは、 優れた形質(その個体の特徴、性質や形のこと)を持つ個体どうしを掛け合わせ、より優れた特徴を持つ個体を作り出すことです。 例えば、日本の名産品である米を例にとると分かりやすいでしょう。 寒さに強いもの、甘みの強いもの、たくさん実をつけるもの、疫病や害虫に強いもの、そういった米作に有益な形質を持った個体を掛け合わせることで、様々な米の品種が作り出されてきました。 突然変異がもたらす形質の変化 この品種改良というのは、遺伝子の突然変異を利用しています。 一つの細胞が二つに分かれることを「細胞分裂」といいますが、細胞分裂の際にDNAは倍に複製されます。 また同じ細胞分裂の際にDNAの塩基配列が間違えられたり、飛ばされたりすることで、重複して複製されてしまうことがあります。 この現象を遺伝子の 「突然変異」といいます。 この突然変異が、ある特定のタンパク質の重要な遺伝情報の配列に入ってしまうと、そのタンパク質の機能が変わってしまい、それによって個体の形質(特徴や性質、形のこと)に変化が起きる場合があります。 そして、この突然変異によって優れた形質が生み出されることがまれに起こるのです。 (逆に致命的な形質の変化を起こすこともあります。 ) ただ、このような突然変異は全く偶然に起きるものなので、狙って起こすことはできませんし、ましてや優れた形質の獲得につながることはほとんどないのです。 この偶然の結果を、ヒトは品種改良に利用してきました。 品種改良では、たくさんの種や個体を使い、交配を行います。 その結果、新しく誕生してきた個体に起きる突然変異によって、育種上、優れた形質を持って生まれた個体を選び出すという「選抜」を行います。 種類によってはたくさんの子孫を得ることができる植物ですが、それでもやはり植物の品種改良には手間と時間とコストがかかります。 牛や豚などの家畜の場合はかかる手間暇はさらに膨大なものになります。 農業関係者がこういった苦労を重ねた結果、現在の優れた品種は確立されているのです。 人為的に品種改良を効率化する技術「遺伝子組み替え」 技術の進歩によって育種(農作物や家畜の改良品種を作り出すこと)に対する社会の要求は高まり続ける一方です。 放射線や化学物質により、突然変異を人為的に誘導する技術の誕生 既に書いたように、従来の品種改良の方法では時間もコストもかかってしまいます。 そこで、DNA配列を損傷する放射線や化学物質を用いて突然変異を人為的に数多く引き起こす技術が開発されました。 この方法では、突然変異が起きる場所は偶然に頼っているものの、突然変異が起きる確率は上がるため、優れた形質を持つものができる可能性が高まります。 品種改良のさらなる効率化を目指す「遺伝子組み換え」の技術 しかし、放射線や化学物質を使う方法も運と偶然に頼るものであるため、手間とコストと時間がかかってしまうことに変わりはありません。 そこで、 優れた形質を持つ個体が現れるのを待つのではなく、自らの手で作ってしまおうという試みが進められました。 それが 「遺伝子組み換え作物Genetically Modified Organism GMO 」です。 すでに多くの記事で触れられていますが、代表的な「遺伝子組み替え作物」には、 ・除草剤耐性作物 ・害虫抵抗性作物 ・耐病性作物 ・ストレス耐性作物 などが挙げられます。 これまでの 品種改良と明確に異なるのは、作物のゲノムの中に別の個体の遺伝子を人為的に組み込んでいることです。 「遺伝子組み換え」の方法は次のようなものです。 まず、上記の「除草剤耐性」「害虫抵抗性」「耐病性」「ストレス耐性」のような形質を持つようにデザインされた遺伝子(例えば、殺虫作用を持つタンパク質を発現する遺伝子)を、植物細胞の中に導入します。 すると「相同(そうどう)組み換え」という現象が起こり、導入した遺伝子が植物のゲノムの中に組み込まれ、その遺伝子によるタンパク質を作り出すようになります。 これによって、目的の形質を持った新しい作物を作り出すことができます。 しかし、 その遺伝子組み換えも効率がさほど良いものではない上に、その個体が本来持っていない外来の遺伝子を組み込むことによる、予期せぬ環境や食の安全性への危険性が危惧されています。 これらの作物の有用性については、その安全性についての研究データの蓄積を待って議論を進めるべきだと思います。 「ゲノム編集技術」を活用した、最新の「品種改良」 意図的にデザインされた形質を、さらに効率的に生み出す品種改良 そして近年、人工ヌクレアーゼ(DNAを切断する酵素)を用いた「ゲノム編集技術」が確立され、生命科学や医学分野のみならず、その汎用性の高さから農学分野への応用が試みられるようになりました。 これまでの研究によって、様々な作物のすべてのゲノム情報が解読され、どこにどのような機能を持つ遺伝子があるのかが既に分かっています。 その情報と、この人工ヌクレアーゼの技術を用いれば、標的となるタンパク質の機能を促進したり、抑制したりすることで目的の形質を持った個体を作り出すことができます。 例えば、ミオスタチンというタンパク質は筋細胞の増殖や成長を抑制する働きがあることが分かっています。 そこで、この遺伝子の機能をゲノム編集技術によって抑えると、筋肉量の増加した個体を得ることができるのです。 「ゲノム編集技術」を利用することで、例えば「畜産」においては、受精卵に直接変異を導入し、その個体を使うことができるようになったため、かかっていたコストも時間も大幅に削減できるようになりました。 2種類ある「ゲノム編集食品」 農作物の品種改良に関わる「ゲノム編集技術」には、大きく分けて、2種類の遺伝子の改変の方法があります。 標的となる遺伝子の特定の部位を切断すると、細胞にもともと備わっている塩基配列の修復機構が働きますが、その際に塩基の欠損、挿入といった突然変異が起こることがあり、この機構を利用した方法です。 実は、 この2つの方法の違いが、「ゲノム編集作物」の表記義務や申請、審査において問題となっていることをご存知でしょうか。 例えば、先ほどの2種類目の方法で作られた農作物の場合は、表示と申請、安全性の審査が義務付けられています。 これに対して、前者は表示や、申請、審査が義務付けられていません。 同じ「ゲノム編集食品」なのに、なぜでしょうか。 食品の表示や審査を行う場合ば、第三者による検証が行われる必要があります。 しかし、この前者の方法による「ゲノム編集食品」は、ゲノム編集によって作られたものかどうかを確認できないのです。 前者の作物の場合、数塩基の変異を誘発しただけで、外来の遺伝子を導入しておらず、人工ヌクレアーゼを発現する遺伝子も、品種として確立する過程で取り除かれてしまっています。 この数塩基の変異は「自然の状態」でも起こり得るもので、ゲノム編集によって起きたものかどうかを検証することができないのです。 検証できないものは審査できず、審査ができないものは表示を義務付けることもできない、ということです。 この現状に対して私たちは何ができるでしょうか。 「ゲノム編集食品」に対して私たちはどう対応すべきか このように様々な問題を抱えている「ゲノム編集食品」について大切なことはまず、その現状を正しく理解することでしょう。 現状では、数塩基の変異を誘導したことによる「ゲノム編集食品」については、届け出制にはなっているものの、表記や申請を義務付けることは困難です。 また、「ゲノム編集食品」のリスクとしてよく挙げられる「オフターゲット(目的とする配列以外の塩基配列に、意図しない突然変異が導入されること)」は改善されつつあります。 技術向上により標的以外の場所への変異が起こりにくくなっていること、品種として確立するまでの過程で、目的以外の形質が現れている個体は排除されていることがその理由です。 外来の遺伝子を導入したゲノム編集作物については、従来の遺伝子組み換え作物と同様に安全性審査が必要とされていますので、こういった食品を避けつつ、その安全性について注意深く動向を見守っていく必要があります。 数塩基の変異を導入したゲノム編集作物については、検証ができないなら仕方ない、ではなく、その上で私たちに出来ることを模索していくべきです。 消費者の感情として、ゲノム編集作物かどうかを知らないまま食用してしまうことに不安を覚えることは当然です。 その不安は、安全性に対する知見と議論の不足によるものでしょう。 安全性の試験は現在、世界中の研究機関によって行われており、随時その報告はなされていくはずです。 そして、日常生活でも議論は行われるべきで、正しい知識を持ち、冷静に議論することで消費者のゲノム編集作物に対する意識は成熟して行くに違いありません。 特に、 食に対する意識が高く、オーガニックに興味のある読者の方々は、積極的にその先頭に立つべきです。 安全性試験の結果の蓄積の必要を訴え、消費者意識の成熟を待たない拙速な市場への導入には待ったをかけるべきですし、パブリックコメント(国の行政機関が政令や省令などの案を事前に公表し、それに対する意見や情報を広く国民か募集する手続き)という仕組みを通じて消費者から声をあげることも可能です。 ゲノム編集作物の持つ問題点と可能性について、俯瞰的に見つめ、深い議論を交わしていくことが食に高い意識を持つIN YOUジャーナルの読者の方々に求められているのだ、と私は思います。 オーガニック食品やコスメをお得に買えるオーガニックストアIN YOU Market 非遺伝子組み替え、非ゲノム編集食品なら、IN YOU Market.

次の

ゲノム食品って何?知っておきたい基本と注意点

ゲノム 食品 と は

とくに、 多くの人が気になっているのはEUの動きです。 状況を教えてください。 立川 2019年は、国内でゲノム編集食品の取扱いが決まっただけでなく、アメリカやオーストラリアなど諸外国でも方向性が明確になりました。 おおまかに説明すると、EUやニュージーランドは、ゲノム編集を遺伝子組換えとして取り扱う方針です。 アメリカは、植物については規制対象外としました。 南米諸国や日本、オーストラリアなどは、外来遺伝子等が残存していないことが確認されれば規制対象外、と判断しています。 EUも遺伝子組換え技術を利用している 松永 各国バラバラですね。 それではまず、EUについて教えてください。 EUでは、ゲノム編集食品を遺伝子組換え食品と同じように禁止しているのに、なぜ日本は野放しにするのか? と市民に尋ねられたことがあります。 立川 EU加盟国が一律に遺伝子組換え食品を禁止しているわけではありませんよ。 EUの事情は込み入っているので、整理しましょう。 まず、遺伝子組換え生物の環境放出の規制の根拠になっている法律は、2001年に施行された「GMO指令」です。 遺伝子組換えについては、欧州食品安全機関 EFSA が承認した作物について、国ごとに栽培を認めるかどうか、決めています。 現在はスペインとポルトガルの一部で遺伝子組換えトウモロコシが栽培されていますが、 栽培させない国が多いのも事実です。 2018年6月、スペインの配合飼料工場で。 遺伝子組換えトウモロコシや大豆ミールなどは配合されてペレット状の飼料になり家畜に与えられる。 遺伝子組換え作物を食べさせても家畜の健康や肉・内臓の安全上の問題はなく、それらは遺伝子組換えの表示がされずに売られている。 立川 また、遺伝子組換え作物の輸入はこれら以外のEU各国でも認められており、EUは、大豆から油を搾った後の搾りかすである大豆ミールや大豆そのものを年間3,000万トン程度輸入し、飼料として利用しています。 そのかなりの割合は遺伝子組換え品種です。 松永 遺伝子組換え作物を食べさせた家畜の肉については遺伝子組換えの表示をしなくてよいので、EUの多くの人は意識せずに食べています。 予防原則に則ってEUは遺伝子組換えを拒否している、なんて日本ではよく言われていますが、現実はかなり違います。 松永 どのような内容だったのですか? 立川 この案件、実はゲノム編集食品の取扱いについて争っていた裁判ではありません。 もともと、フランスの農業者団体がフランス政府の決定を不服として欧州司法裁判所に提訴していたもので、突然変異を利用するさまざまな品種改良について、法律上の整理を求めていました。 裁定では、突然変異誘発に由来する生物はすべて遺伝子組換え生物であり、GMO指令の法的義務を負う、と判断されました。 ただし、長期にわたり安全に使われているものは、除外する、としました。 松永 どういうことですか?もう少し平易に解説してください。 立川 突然変異による品種改良の中には、化学物質、放射線などを用いてゲノムに突然変異を起こさせるものや、ゲノム編集のようにゲノムの狙った部位を変異させるものなど、さまざまあります。 裁定は、 化学物質や放射線などを用いた従来からの突然変異技術はGMO指令の対象外とする一方、2001年以降に開発された突然変異誘発技術はすべて、遺伝子組換えと同じ規制を受ける、としました。 ゲノム編集による品種改良は2001年以降の技術なので、遺伝子組換えと同じ扱いです。 松永 遺伝子組換えに反対してきたEUの市民団体が勝利宣言し、大々的に報道されました。 それにより、日本でも、EUは遺伝子組換えと同じようにゲノム編集食品・生物も拒否した、という印象になりました。 EUの判断は、リスク評価に基づくものではない 立川 ポイントは、この裁判所の判断がリスク評価に基づくものではない、ということです。 2001年に制定されたGMO指令の条文からどう解釈できるか、という検討により導き出した結論です。 松永 なるほど。 ゲノム編集食品は危ないから、EUは遺伝子組換えと同様に厳しく規制するのだ、と考える人もいるのですが、それは間違い、というわけですね。 立川 欧州司法裁判所は、EUにおける最高裁判所にあたります。 したがって、この裁定は覆りません。 GMO指令は20年前にできたもので、ゲノム編集技術まったく想定していませんでした。 したがって、新技術の登場により法令の見直しが必要なのだ、と私は考えますが、それは行われていません。 研究者がEUから逃げ出している 松永 この裁定の結果、EUはゲノム編集による品種改良の研究開発も、規制をどのようにするかの議論もまったく進まなくなり膠着状態に陥っている、と聞きました。 立川 研究者たちが、荷物をまとめてアメリカや南米、中国へ行った、という話も聞きます。 欧州司法裁判所の裁定後、欧州委員会では審議を続けており、欧州食品安全機関に対してリスク評価も依頼しています。 しかし、具体的にどのような規制とするのかは、まだ不明です。 松永 ゲノム編集技術は、食料増産や気候変動対策に有益な品種改良技術の一つです。 その技術の域外流出を招いてしまって、EUは大丈夫なのでしょうか。 裁定に対する科学者や産業界の反発は強く、2019年7月にもEUの117の研究機関が合同で、規制を近代化してほしい、とする見解を表明しています。 アメリカでは、ゲノム編集作物は規制対象としない 松永 膠着状態のEUに対して、ほかの国はどう動いていますか? 立川 アメリカは、作物と動物で取扱いが異なります。 作物については農務省 USDA が方向性を示しており、ゲノム編集作物のうち、ゲノムの狙った部位を切り塩基が欠失したり置換したりしたもので外来遺伝子が残存していない場合は、規制対象外となる方向性です。 松永 日本の制度とだいたい同じ、と考えてよいでしょうか。 立川 日本は国への届出や情報提供を求めますが、アメリカは作物については求めません。 ただし、事業者が自らUSDAに情報を提供することはできます。 USDAに届け出られた事例は20件以上あります。 大学などからの届出が多く、2020年1月現在、商品化が公表されているのはオレイン酸の含有量が多い大豆1品種のみ。 油に加工されレストランなどで提供されているそうです。 松永 そうした情報を市民が把握しづらく、不安を煽られているのが問題です。 ゲノム編集によってオレイン酸含有量が多くなった大豆が、知らないうちに豆腐や納豆などとして店頭に並んでいるかもしれない、などと脅かす識者まで現れているのです。 油の原料になる大豆と、豆腐や納豆になる大豆は品種が異なるので、そんなわけはないのですが。 立川 一方で、アメリカ食品医薬品局 FDA はゲノム編集動物については、遺伝子組換え生物として規制する方針案を打ち出しました。 その後多くの科学者や産業界が政府に規制見直しを求める署名活動を展開しています。 ケースバイケースでリスクを評価し判断するべきだ、という主張です。 そのためか、FDAはまだ正式決定していません。 ただしFDAは昨年、ゲノム編集により角がなくなった牛のゲノムを詳しく調べ、外来遺伝子が残っているのを見つけた、と論文で報告しています。 実験において、なんらかのミスがあったのだろう、と考えられています。 国への届出や第三者によるゲノム情報のチェックは、やっぱり必要なのかもしれません。 法律のアップデートが必要だが… 松永 各国の規制がバラバラなので、輸出入が円滑にできるか、心配になります。 今後、ゲノム編集食品が生産され本格的に流通しはじめた時に、どうなるのか。 食料の高品質化や生産力向上、気候変動対策など、品種改良への期待 は大きい。 ゲノム編集技術は、品種改良の手法の一つとして、大きな 可能性を持つ。 2019年12月、農研機構で 松永 そうなると、EUは作物を自給し、南米産の安い作物の輸入を防いで域内の農業生産を守れる、ということになりますよ。 EUの農業者にとっては願ったりかなったり、かも。 立川 その一方で、アメリカや南米諸国等が遺伝子組換えやゲノム編集で品質や生産力を格段に高めた作物を生産しその恩恵を受けられるのに、EUは置いてきぼり、という事態にもなり得ます。 松永 うーん。 難しいですね。 食料の高品質化や生産力向上、気候変動対策など品種改良におけるプラスの効果と、そのための技術や産業の育成、そして、自国の農業保護と……。 さまざまな要素がミックスされて、各国の思惑が絡み合うことになるのかも。 日本は、2011年から検討していた 松永 日本の規制については、どのようにお考えですか?日本はアメリカの圧力を受けて制度を短期間で決めてしまったからけしからん、とよく、批判されますが。 立川 それは事実ではありません。 記録と私の記憶によれば、 議論がはじまったのは2011年。 このときは、新たな育種技術 New Plant Breeding Techniques の頭文字をとって、NPBTと呼ばれており、ゲノム編集技術もその一つ、という位置づけでした。 以降、日本学術会議や農林水産省などが検討を重ねており、2018年6月に閣議決定された統合イノベーション戦略で「国民に正確な情報を発信しつつ、技術開発・社会実装を進めていくことが必要」「カルタヘナ法上の取扱い及び食品衛生法上の取扱いについて、2018年度中を目途に明確化」と位置づけられ、議論をまとめた、という流れです。 リスクの大きさに応じた規制が必要 松永 日本は、しっかりと検討のうえで制度を決めた、と評価してよいのでしょうか。 立川 そうですね。 ただ、日本は主に、食品衛生法とカルタヘナ法に基づいて規制されるのですが、法律により制度に少し齟齬があるのが気になります。 どの国についても共通して言えることだと思いますが、昔できた法律の条文解釈で規制が決まる、というのはよくない。 技術の変化に合わせて規制もアップデートすべきです。 その食品・生物のリスクの大きさに応じた規制やモニタリングが講じられるのが望ましい、と考えます。 技術は進歩しますよ。 そろばんを使っていたのが電卓になったらもう、二度とそろばんには戻れないですよね。 ならば、新技術をしっかりと調べて理解して、規制のコストも検討して過剰規制は避け、新しい動きはすぐにキャッチアップして、という体制を整えておくべきだと思います。 松永 日本の制度は、ゲノム編集食品の規制をリスクの大きさに応じて変える、という点では配慮されているように思います。 従来の品種改良と同等の変異は、規制はかけないけれど届出や情報提供を促しています。 外来遺伝子や特定の塩基配列を入れ込むゲノム編集食品については、導入する遺伝子・塩基配列の性質によりリスクの懸念も出てくるため、安全性評価を行う、という仕組みになっています。 立川 作物の品種改良に用いる場合には、ゲノム編集した後に戻し交配や選抜などの多段階のステップがあり、その過程で望ましくない形質のものは排除されるので、大きなリスクにつながりにくい、というのは言えそうですね。 ただし、ゲノム編集生物が環境中に放たれて生育したり栽培されたりした時の環境影響は不確実性が伴う、という主張もありますよ。 ゲノム編集技術は従来の遺伝子組換え技術よりも応用範囲が広いので、注意しておかないと。 松永 それはどういうことですか? 立川雅司教授は、三上直之・北海道大学高等教育推 進機構准教授との共著で、市民による議論・思考の 重要性を示す書籍も出している。 ひつじ書房、2019年) 松永 自然の生物を保護したり管理したりする分野でもゲノム編集技術が用いられようとしていてリスクが話題に上ることも多いのですが、それらは、品種改良とは異なるゲノム編集技術の使い方なので、市民には区別して理解してもらいたいです。 ホライゾンスキャニングが必要 立川 技術開発が進み、人が把握する前に人の健康や環境に大きなインパクトを持つようになってしまった、という事態を招かないように、情報を集めておく必要があります。 私の共同研究者で東京大学公共政策大学院特任講師の松尾真紀子さんが、日本でもホライゾンスキャニングが必要だ、と提唱しています。 ホライゾンスキャニングというのは、新興技術について研究開発や市場動向、法規制や社会が受け入れるかどうか、などについて情報を集め、変化の兆候や萌芽をすばやくとらえる活動です。 すでにアメリカでは農務省の資金提供で準備がはじまっています。 一方、日本は情報が各省庁に分散しています。 統合して情報を蓄積し、迅速に判断できる体制作りが望まれます。 松永 ゲノム編集には大きな可能性があり、だからこそ、注意すべきだ、ということですね。 電卓を捨ててそろばんに帰れ、ではなく、電卓を上手に使いこなす英知が必要です。 ゲノム編集食品の開発者には、きちんと届出や情報提供をお願いしたいし、市民・消費者も、間違った情報には惑わされず冷静に関心を持ち続けないといけない。 今日はどうもありがとうございました。

次の