山田 独歩。 山田独歩が入会1年目でのタイトル奪取!/第3期新輝戦

学祖 山田 顕義 「人生の師 吉田松陰との出会い」

山田 独歩

ずっと兄ちゃんのラップが好きだった。 かっけーライムにしびれるリリック。 他の追随の許さないその背中は大きくて、振り向く笑顔は勇気をくれた。 強くてかっこよくて優しい、そしてラップに誠心誠意愛を捧げている。 兄ちゃんは俺の憧れだ。 そんな兄ちゃんと正反対と言ってもいい、試合前にみた観音坂独歩という男はそんなやつだった。 決勝戦。 俺たちが辿りつけなかったその舞台に立つ二つのディビジョンは相手を睨みつけるようにして向かい合っていた。 少し前までは同じ場所に立って試合をしていたはずなのにその場所にもう自分達の居場所はなくて、勝ち上がった者だけが上れる場所。 負けた悔しさはまだまだ冷めることなく、見つめる視線はどうしたって鋭くなる。 そんな二郎の眼に一番最初に映ったのは他の五人が堂々たる佇まいで相手を見据えている中、一人だけ背中を丸めおどおどと視線を彷徨わせているサラリーマンだった。 首に掛かっているネクタイと社員証はステージ上で炊かれているスモークに攫われて揺れている。 どんなに揺れても決して離れることのないその赤い紐は、まるで獰猛な獣を抑えるために掛けられている首輪の様だった。 社員証ぐらい外して来いよ 自分や三郎が制服の名札をつけてバトルに挑んでいるところを想像してしまい、それはないなと首を振った。 想像しただけであまりのダサさに吐きそうだ。 彼の挙動も相まって何となく苛立った二郎は舌打ちをする。 それでも彼は決勝戦進出者であることには違いなくて、それに相応しいラップスキルを持っているのは纏う雰囲気で感じ取ることが出来た。 でもどんなスタイルなのか想像できないな… 一歩下がった独歩は疲れたように溜息を吐くとそのままチームメイトである一二三のもとに行き何やら相談をしているようだった。 その時伏せられた目が一瞬細められ、二郎の下にゾワリとした寒気を運ぶ。 「?」 「ん?どーした、二郎」 「あ、いや。 なんでもないよ、兄ちゃん」 再びステージに視線を戻すともう話し合いは終わったようで二人とも元の位置に戻っていた。 会場全体が揺れる程大きなゴングが鳴り、MTCの先行で試合が始まる。 始まりから最大火力で放たれる言葉の応報に目が釘付けになった。 三人一線に並んでそれぞれのスタイルを崩すことなくそれでもそれがうまく噛み合い共鳴しているMTC。 両サイドでまるで一つの存在であるように息の合ったリリックを交互に刻む一二三と独歩を寂雷が後ろから支える麻天狼。 似ても似つかない二チームのバトル展開に会場中が息をのんで見守っていた。 なんとなく隣に視線を向けると三郎は真剣な顔をしてバトルの行方を見ていた。 その目は悔しさと同じぐらい未来を見据える闘志に満ちていて、音になることはないが時々動く口の中ではきっと俺には考えられないくらい難しいことを考えているのだろう。 反対側を見てみると一郎はただただ真っ直ぐにステージを見つめていた。 時々動く眉毛はかつての仲間への懸念なのか鼓舞なのか。 いや、それもあったかもしれないがきっと今一番大きく彼の心を占めているのは俺たちと同じ悔しさだろう。 強く握りしめられた拳は白くなっていた。 それでも逸らされることのない瞳は綺麗に澄んでいて、今一郎の耳にはこの勝負の音がどう聴こえているのだろう。 俺達が聴いてる音とは全然違うんだろうな… 「……強くなりてぇな」 二郎のつぶやきは周りの音にかき消されて誰にも届くことなく消えた。 一郎と同じようにいつの間にか強く握りしめていた掌には汗が滲んで、指先が湿る感覚を噛みしめるようにもう一度だけ強く握る。 舞台の上へと視線を戻すと変わらず激しいリリック同士のぶつかり合いが繰り広げられていて、瞬きをする暇もないほど一挙一動が油断ならない。 あまりにも高度なレベルの戦いに二郎は大きく唾を飲む。 冷静に試合を観たいがそんな気持ちとは裏腹にだんだんと勢いを増していく心拍数に今すぐに潰されてしまいそうだった。 バトルも中盤に差し掛かってきたところで、お互いのリーダーからの強烈な一発がぶつかり合い会場全体を揺らすような大爆発がおきた。 激しい音と共に舞台上が煙に包まれる。 観客席にもその煙幕は広がり、二郎も咄嗟に目を瞑った。 音響機材も被害を受けたのだろう、BGMのようになっていたビートも止んで、一瞬で会場は静寂に包まれた。 どこからか吹いている微かな風の音だけが聴こえる。 その不気味な静けさが伏せられた浅葱色の眼を連想させ、先ほどと同じ寒気が二郎を襲った。 ……そうか、あの時のあいつの細めた目は静かな闘志だ おどおどとした様子で相手と挨拶をするくせに、目には殺意ともとれる闘志しか宿していなかったくたびれたサラリーマン。 その瞬間途絶えていた酸素が急に回ったかのような速さで心臓が動く。 突然上がった息に汗が溢れ、どうしようもない衝動に駆られて煙がやまない中目を開けると、二郎の目に飛び込んできたのは煙を突き破るように現れた一枚の液晶画面と、静寂に一線を入れるように響くマイクの起動音だった。 「なんで…なんでお前がそこにいんだよ」 寂雷と一二三の壁になるように最前線に立ち、その男は天に向かって指を掲げた。 「……この俺が………っ、独歩だ…っ!」 今日一番の熱を持ったシャウトがこの世界の全ての鬱憤を吹き飛ばすように弾ける。 一切身を守らずに攻撃を受けた身体はぼろぼろで垂れた鼻血が喉に入って声もかすれているのに、一枚になり果てたスピーカーから拡声されていく音はどうしようもなく二郎の胸に響いた。 彼の熱が会場全体に広がっていく。 止まっていたビートが再び流れ始め、滞留するスモークの中ただ一人リリックを刻む男の言葉に、目も口も奪われた観客は耳を受け渡すしかなかった。 何とか目を開け続けている二郎は心臓に焼き付けるように独歩の攻撃を見る。 ギリギリの状態で繋がれている彼の生き様から目を逸らすことが出来ない。 どうしようもなく魅入ってしまった。 煙にまみれて灰色だった世界が雷鳴のような言葉の光でどんどん色を取り戻していく。 どこからあのパワーが湧いてくるのだろう。 何が彼を強くさせるのだろう。 下から見上げるように睨む視線は好戦的で口元は不敵に笑んでいて、どうみても今に倒れそうな程ぼろぼろな状態なのに、彼が負ける姿を想像することが出来なくなっていた。 独歩の一節がリスタートのゴングとなり、それから数回の応報の末に決着がつく。 最後の言葉を刻んだと同時に倒れた独歩の傍には宙から舞ってきた透明なケースがカシャンと音を立てて落ちた。 繋ぎの部分が割れたそのケースはもう使うことは出来ないだろう。 ケースが壊れたって首輪はついたままじゃねぇか 倒れ込んだ身体の間から見える赤い紐がやけに鮮明に二郎の目に映った。 大きな歓声が試合の終わりを知らせる。 あの時自分の名前を叫んだ彼は何を伝えたかったんだろう。 天に向けられた人差し指は、神への挑戦状か王者の棺か。 その日麻天狼は王様となり、その王様に仕える狼は案外いい奴だったと二郎が知るのはバトルが終わった数か月後であった。 「あ~~~腹減った…」 時刻は午後七時を過ぎた頃。 学校帰りそのまま依頼の手伝いに来ていた二郎は制服を身に纏っていて、中身がほぼ入っていないスクールバックをつまんなそうに前後に振った。 本当は仕事の後一郎と一緒にラーメンを食べて帰る約束をしていたのだが、急遽お客さんに追加の依頼を頼まれてしまい、一郎だけがそれで居残りをしているという訳だった。 一緒に残ると上げた手は一人で十分と断った依頼人の声により下げることしかできなくて、朝からずっと楽しみにしていた一郎とのデートがなくなったことに二郎はふて腐れていた。 道端に転がっている小さな石を蹴っ飛ばす。 すぐ近くの電柱にぶつかったそれは跳ね返り二郎の足元に戻ってきて、イラつく気にもなれず小さなため息をついた。 人混みをずっと歩いていると少しだけ疲れてしまったので、道端の適当な柵に腰を掛ける。 一息ついて周りを見渡してみると、この街に到着した夕方よりも人が増えている気がしてさすが夜の街だなと帽子を深くかぶり直した。 どこを見ても視界の端にちらつくネオンの光。 見上げた空は漆黒に染まっているというのに見渡す街はまるで昼間のような明るさに包まれていた。 魚のように流れていく人の波を帽子の影から静かに眺める。 派手に着飾り腕を組んで歩いている男と女。 サングラスをかけてごつい指輪を両手に嵌めているいかにもといった風貌のヤンキー。 その中を歩きずらそうにすり抜けているサラリーマン。 そのサラリーマンはバックを両手で前に抱えるようにして持っており前屈みの背中が描く曲線に、マイクを抱えてリリックを刻んでいたふわふわ浮いた赤茶毛を思い出す。 あいつもこんな感じで生きてんのかな でもこんな目はしていなかったよな、と目の前を通り過ぎていった誰だか知らないサラリーマンの顔を忘れるように目を伏せた。 もう人生を遊んでいない歳を取った大人たちの死んだ目は自分の世界を曇らせる。 輝いた目で生きろとは言わないし、理不尽でどうしようもない現状を打破できなくて苦しむことしかできない瞬間もあることだって知っている。 それでも明日を信じる希望だけは誰の胸にもあると思うのだ。 どんなに見た目がくたびれていようと、小汚い格好をしていようと、その光を持っている人は死んだ目をしていない。 そう、もっと、こう、ぎらぎらと… 重めの前髪から覗く強い意志の瞳を思い出す。 見た目や挙動、彼の纏う雰囲気に騙されがちだが一目見た時からここらへんで日々を無駄に消費している奴らとは目が違った。 死んだ目なんてしていなかった。 「え、二郎くん?」 頭上からふってくる声に二郎はゆっくりと瞼を上げる。 かちりと視線が合い一瞬見開かれたその瞳に、二郎は口を噤んだ。 柵から腰を下ろすと彼の前に静かに立つ。 「……」 そう。 この目だ。 「独歩」 決勝戦やこの前一緒に共闘した時とは声のトーンが少し違うけど、一度聴いたら忘れられない独特の高さに子供っぽさを滲ませたような声。 いつも通りのくたびれたスーツを着て首には赤い紐が巻き付け、いかにも仕事帰りといった風貌で観音坂独歩は立っていた。 「な、なんでこんなところに…あまり高校生が一人で来ない方がいい場所だよ」 「兄ちゃんの手伝いでちょっとな。 それに俺結構年上に見られがちだし平気」 「で、でも今制服着てるじゃないか」 「あ」 上着脱いだ方がばれないかな、と聞くとどうだろうと笑われた。 一緒にリリックを刻んだことで、初対面の時よりは普通に会話をできている気がする。 まぁあの時は緊急事態だったし二郎自身も喧嘩腰だったのでお互い様だ。 「二郎くんはここでなにしてたの?お兄さん待ち?」 「いや、兄ちゃんはまだ仕事中。 俺はちょっとぼーっと眺めてただけ」 「……まぁ、見ていて飽きないよな。 人の流れって」 煩いけど。 ぼそっと呟かれた言葉に目だけで反応をする。 何も表情が変わっていない横顔の視線の先には交差点を行き交う人々に溢れていて、なんとなく同じように二郎もそれを見つめてみた。 「独歩は仕事帰りか?」 「ああ。 久しぶりに早く帰れて……はは、よく考えたらこんな時間に帰れたの半年ぶりとかかもしれないな……はは、悲しくなってきた…」 何かスイッチを入れてしまったのだろう。 人混みを見ていたはずの顔はこちらに向き直っていて、口からとめどなく溢れ出すなぜ早く帰れないのか討論の語尾には全て俺のせいがついている。 その時突然自分の頭を抱えてしゃがみ込んだ独歩に、二郎はぎょっと身体を引いた。 「あぁ、仕事終わって帰ろうとした瞬間に明日やればいい仕事をハゲが押し付けてくるのも俺のせい…会社のエレベーターが壊れて皆が階段を使わないといけないのも俺のせい…」 「うわぁぁぁ!!こんな往来の場でしゃがみこむな!いい大人だろ!!しかもエレベーターはどう考えても独歩のせーじゃねぇよ!」 「…優しいなぁ…二郎くんは…」 「こ、こんなん普通だ…っ」 突然の賛辞に少しだけ言葉が詰まる。 あまり大人から褒められることがないため、慣れない言葉がこそばゆかった。 「…と、とりあえず、立てって!」 「おわっ」 「え」 「え?」 軽い。 軽すぎる。 え、大人って骨しかないのか?三郎と大して変わらないんじゃないか? 「え、ど…どうしたの二郎くん」 「いや、軽いなと思って…」 「かっ…!」 「なんか…あれだな。 独歩もいろいろ苦労してんだな…」 二郎は優しく肩を二回叩くとそのまま手を引いてさっきまで自分が座っていた柵に独歩を座らせた。 軽いと言われたショックを引きずったままされるがままに流されていた独歩は、俺バック持っててやるよ、と二郎から眩しい笑顔を向けられたので素直に鞄を渡すしかなかった。 「俺も一二三みたいに鍛えようかな…」 小さなため息と共にこぼれた独歩の言葉。 独歩の隣に腰を掛けて、バックは重いな~と持ち上げている二郎にはもちろん届くことはなかった。 「なぁ独歩、独歩は優勝してなにか変わったか?」 なんの前触れもなくその言葉は二郎の口から零れ落ちた。 どこか遠くを見ていた瞳がピクリと一瞬見開く。 ゆっくりとこちらへ振り返る顔を二郎は逸らさずにじっと見つめた。 今、自分がどんな顔をしているのかはわからない。 それでも、自分と目が合った独歩が少しだけ目じりを下げて微笑んだからそのまま言葉の続きを待つことにした。 「……なにもかわってないよ」 何も変わっていない、そう言って独歩は嬉しそうに笑った。 優勝して何も変わらないなんてそんなこと普通は嘆くはずなのに、目の前の男は柔らかい表情を浮かべてもう一度、変わってない、と呟く。 なにが変わっていないのだろう。 彼を取り巻く世界のことなのか、彼自身のことなのか。 決勝戦で観た彼の狂気を思い出す。 やられようとも倒れようとも勝利のために何度も何度も立ち上がっていた。 あそこまで命を張ってマイクを握っていたのは、何か変えたいものがあったからではないのか。 どういう意味だよ、そう問いかけようとした言葉は喉から出る前に音にかぶせられて消えてしまった。 「俺はどうしたってきっと俺のままだから」 大きな風が二人の間を通り抜けていく。 前髪で隠れる視界の中、濃い隈に隠れた瞳にはネオンが反射して小さな光が宿っていた。 何か区切りの良い時間になったのだろう。 突然柵の前の建物に明かりが灯り、二人の瞳にはカラフルなネオンの光が溶け込んだ。 世界を小さく閉じ込めたような彩が独歩の目に映っている。 独歩にはこの世界がどんな風に見えてんだろ 麻天狼が優勝して世界はほんの少しだけ変わった。 シンジュク区の男の税金が少しだけ下がったとか、郊外に病院が建てられ始めたとか。 そんな変わっていく世界で変わらないまま生き続ける独歩がマイクを握る理由は何なんなのだろう。 神宮寺寂雷への恩返しか? 独歩と一二三がチームリーダーである寂雷のことを敬愛していることはバトルを観戦した時に一目でわかった。 そんな寂雷にチームに誘われ一緒に戦ってほしいと言われたら二つ返事で承諾するはずだ。 二郎が一郎に恩返しをしたいと思ったように。 しかしその仮定を立てると、バトル時の観音坂独歩に違和感を覚えるのだ。 共闘してみてわかったことがある。 それは独歩が言葉に飢えた獣だってことだ。 自分の中に溢れる言葉の出しどころを常に探している、感情を言葉に乗せる快感の虜になった生粋のラッパー。 そうだ あの倉庫で麻天狼と戦った時、一番最初にマイクを起動させたのは独歩じゃないか。 パッと独歩の方を振り向くとそれに気が付いた独歩もこちらに顔を傾けた。 バトル時にはつりあがる眉毛は自信なさげに下がっている。 二郎にとって独歩のイメージはどこまでもちぐはぐだった。 そりゃそうだ、数度会っただけの他ディビジョンのメンバーの一人でしかない相手を理解しようなんて無理なことだとわかっている。 だから、相手を判断する基準を二郎は持っている。 言葉が手段になったこんな時代だからこそ、何を一番大切にするかを自分の中で決めていた。 「俺にはよくわかんねぇけど、独歩にとっては自分でいることが一番大切ってことか?」 戦った時にくらった言葉の重さ、一緒に刻んだリリックの熱さ、相手を知るにはそれだけで十分なんだ。 重ためな瞼が驚いたように見開く。 一瞬開いた口はただ息だけを吐き出してゆっくりと閉じるとそのまま緩い弧を描いた。 「うん。 そうだね」 自分が自分であるためにマイクを持ち言葉を刻む。 観音坂独歩がマイクを持つ理由は思ったよりも単純なものなのかもしれない。 「そっか」 春の空気は澄んでいて、二郎の言葉は優しく響いた。 「べっつに見送りなんてしなくてもいーのに。 俺喧嘩とか負けねーし」 「俺なんかより強そうなのは重々承知してるよ……でもだってほら、君は一応未成年じゃないか」 「まぁそーだけど。 と言うか独歩、あんまりでも、とかだって、とか女々しいこと言わない方がいいぜ。 兄ちゃんがここに居たら怒られんぞ」 「え!?そ、そっか……女々しい……気を付けるよ…」 「俺もたまに言っちまうけどな~!」 先ほどまでいた場所も大概多かったがより人通りが増えたのを感じる。 どうやら駅付近まで戻って来たようだ。 街灯の様に立っている柱時計を見てみると時刻はもうすぐ21時になりそうで、案外長居をしていたらしい。 これだと一郎よりも後の帰宅になるかもなと考えながら伸びをすると、溜まった疲れと一緒に口から大きな欠伸がでた。 チラリと横を歩く独歩を見てみると、二郎の欠伸が移ったようで手で口元を隠すように抑えていた。 スニーカーと革靴が並ぶ帰り道。 地面に当たって鳴る音が全然違くて、靴にも音があるって知った。 トン、トン、トンと鳴らして歩く。 数歩だけ独歩よりも先に進むと二郎はその場でくるりと振り返り、人差し指をピンとたてて独歩の前に突き出した。 「独歩、さっきお前何も変わってないって言ってたじゃん。 でもそれは間違いだな」 「え」 「独歩にだって変わったとこ一つあるぜ」 今この状況も独歩にとっては今までと変わらない普通のことだったのだろうか。 仕事帰りにシンジュクの街で高校生と二時間もだらだらと過ごしたりすることが。 いや、そんなはずはないだろう。 二郎は突き出した指で自分自身のことを指さした。 「おれ!」 「は?」 予想外の言葉に驚いたのか、独歩の声は普段よりも2トーン程高くなっていた。 言葉の意味が理解できないとでも言うように目をまん丸にしている。 この時初めて独歩の眼に浅緋色のグラデーションが入っていることを知った。 そんな彼の顔を見て二カッと笑ってみせる。 「独歩の人生に俺が現れた!それってすげー変化じゃん。 ラップしてなきゃ絶対に出会うことなかったぜ。 シンジュクのサラリーマンとイケブクロに住む高校生なんてさ」 「………」 「おれは独歩のラップ見て、兄ちゃん以外のこともかっこいいって思う自分がいるんだなって初めて知った!まぁ兄ちゃんが一番だけど!」 「……は、ははっ」 丸かった目が徐々に細められていく。 先ほどまで見えていた浅緋色の瞳は瞼に隠れてしまってもう見えない。 もしかしたら一緒にいた時の彼は笑っていることが多かったのかもしれないなんて考えてしまった。 「そんな見方もあるのか…。 いや、そもそも…ふふっ、なんでもない。 はは…」 ツボに入ったらしい独歩は口を押えても意味ないほどに息を漏らして笑っていた。 今別に何か面白いことを言った覚えのない二郎はなぜ独歩が笑っているのかわからず首を傾げる。 そんな二郎の疑問は顔に出ていたようで、一通り笑った独歩はありがとう、と口を緩めた。 「そんな変化でいいならちゃんとあるよ」 駅前まで辿りついた独歩は静かに足を止める。 「俺なんかのことかっこよかったって言ってくれたのは一二三と先生以外で君が初めてだ。 ……結構、いや、かなり嬉しかった」 今度は二郎が目を丸くする番だった。 優勝したくせに褒められてねーの?とか、その二人と俺を並べてもいいのかよ、とか色んなことが浮かんだが、一番は俺に褒められたことでそんな嬉しそうな顔をするのかよということだった。 少しだけ照れたように話す姿が面白くて二郎の顔はみるみるうちに明るくなっていく。 大きな口を開けながら笑って独歩の肩と叩くと頼りなさげなその肩は振動に揺すられ少し傾いた。 「ははははっ!なにそれ!恥ずかしがってんじゃねーよ!かっこよかったぜあの時の独歩」 「いたっ、痛い。 ……はは、でもありがとう」 騒がしい駅前に二人の笑い声が溶けていく。 傍から見たらサラリーマンが高校生に絡まれているようにしか見えないかもしれない。 それでも二人の表情は晴れやかで、流れる空気は優しかった。 「……俺なんかの姿をみて誰かの心に何か気持ちが生まれるなら、俺が俺である意味にもなるよな」 笑い声が治まった一瞬静かに響いた独歩の声。 小さく零れた言葉に意味が二郎にはわからなかったけど、顔を上げた独歩が満ち足りた顔をしていたから嬉しくなった二郎は笑みを深くして話しかける。 「なぁ独歩、次は試合で戦いたいな」 「え」 「嫌悪のない純粋な闘志だけでリリックを刻めそうだ…きっといい試合になる」 「………そうだな」 目を伏せて笑う独歩の声は穏やかで、それをみて二郎はさらに嬉しそうに笑った。 二つの影は別々の方へ伸びていく。 自分達のいるべき場所へと帰っていく。 きっとこんな偶然はなかなかないから、次に会えるのは2回目のディビジョンバトルの時かもしれない。 それはなんだか寂しい気がして、もしも次また会うことが出来たら今度は連絡先を聞いてみようかな、なんて思ったり。 緑色の電車が到着したアナウンスが構内に響き渡る。 流れこむ人込みと同じようにして電車に乗り込むと窓の外のネオン街に別れを告げるようにバイバイと口を動かした。 さぁ帰ろう、兄ちゃんと三郎が待つ俺のhoodへ。

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総勢271名の学生雀士が参戦!1月26日開催の「雀魂杯 オンライン学生麻雀カーニバル」はKanameさんが優勝!ゲストの楠栞桜さんと小林美沙さん、山田独歩プロとの掛け合いも!

山田 独歩

独歩さんは私の超憧れの人…。 天鳳位の方はしゅかつさんをはじめ朝倉Pなど全員尊敬してあまりあるのですが、その中でも独歩さんは私の裡でも特別な方でした。 2014年11月29日にスリアロチャンネルにて放映された「四神降臨外伝~麻雀の鉄人」での打牌選択の早さと正確さに一目ぼれし「この人、間違いなくプロになったらとんでもないことになる!」と確信したのを思いだします。 その憧れの独歩さんと二度目の再会を果たしたのが、遠征した2018年の西東京予選(池袋)。 そこで、あの独歩さんが運営をされていることに驚くと同時に「今日はいい日だ!勝てるような気がする」と3回戦でこっしー(言わずとしれた2018年のヴェストワンカップを優勝したアマチュア最強のマスクマン)と同卓するも、強敵こっしーをしりぞけて4回戦進出。 4回戦は残念ながらアガリトップを制せずに敗退。 その後も独歩さんが運営の時はほぼ全部4回戦進出し、チケットを獲得したのも2回と 私の勝利の女神だと確信いたしました(写真2:高田馬場東東京予選) 同郷広島の金本委員長からDeath予想を頂いたものの(?)なんとかC卓を勝ち上がりました。 独歩さんも私の勝ち上がりを見届けて下さり「よかったですね!私は仕事で帰りますが、決勝頑張ってください!」とのお言葉….。 言下に私は「独歩さん!!!独歩さんがいないと勝てないですよおおお!!!頼みますから帰らないでもらえませんか!!10万円出してもいいです!!!頼みますううう…」と懇願。 無茶なお願いであり、独歩さんもうかない顔をされていたので「すみません、無茶言ってごめんなさい…独りで頑張ってきます…」とおことわりをし、独歩さんがいないという不安を抱きながら決勝の舞台に進みました。 途中でチイトイ1萬見逃し、25Sアガリ逃し、ハイテイ1萬カンなどのありえない失態を重ねての赤面の勝利は、最強戦の威厳を損なう視聴者、大会関係者に大変申し訳ないものでした。 胸を張って楽屋には戻れませんでした。 金本委員長とのインタビューを終え、楽屋に戻ったらなんと独歩さんがおられてビックリ!!私のために仕事をキャンセルして観戦してくれていたそうで、私の勝利は独歩さんがそばで見守ってくれたことがすべてだと言っても過言ではありません(10万円払わずにすみません><)。 それから年が明け、独歩さんは最高位戦プロ麻雀協会の山田独歩プロになられました。 2019年1月に行われた最高位戦ペアマッチでは、運営様のはからいで第1回戦は独歩さんと私が同卓予定でしたが、体調を崩されて欠席されたのが残念でした。 とにもかくにも、私のような競技麻雀駆け出しの男が優勝までできたのは、ひとえに独歩さんのおかげです。 (独歩さんは強く否定されますが…)独歩さんが今年の11月23日のアマチュア代表決定戦にも現場にいてくださることを心より願っております。 あと関東地区の皆様へ… 独歩さんは2019年も関東地区予選の運営をされるそうなので、ファンの方は是非参加されて下さいマセ。

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山田独歩が入会1年目でのタイトル奪取!/第3期新輝戦

山田 独歩

考察が捗る!実は関係がありそうなキャラクターたち かなり奥が深い、ヒプマイの世界観。 まだまだ解明されていない謎や、未回収の伏線が多すぎるんですよね。 ここではそんなさまざまな考察のなかでも、「あのキャラとあのキャラの血縁関係は?」という点にしぼって紹介していきます!!気になる部分ですよね。 この記事では、イケブクロ・ディビジョンの山田兄弟の血縁関係について、そしてシンジュク・ディビジョンの観音坂独歩(かんのんざか どっぽ)についての血縁関係についてそれぞれ考察していきます。 山田兄弟 イケブクロ・ディビジョンの山田一郎、山田二郎、山田三郎からなる3兄弟。 一郎は19歳、二郎は17歳、そして三郎は14歳です。 全員が10代というディビジョンは今の所イケブクロ・ディビジョンだけ!3人は児童施設育ちであり、両親はいないということが、コミカライズにてわかっています。 複雑な家庭に育っているのです。 兄である一郎が2人を支えるために働いていましたが……。 観音坂独歩 つづいてはシンジュク・ディビジョン「麻天狼」に属している観音坂独歩。 年齢は29歳、職業はサラリーマンで、医療機器の営業を行っています。 「ヒプマイ」内にて最も人気キャラクターなのではないでしょうか。 ネガティブな性格で、なにについても自分のせいだと考えてしまう一面が。 同じシンジュク・ディビジョンの伊弉冉一二三(いざなみひふみ)が唯一の友達で幼馴染。 彼とは一緒に暮らしています。 ドラマパートにて、弟がいることが分かっています。 ヒプマイ考察 その1 天谷奴零と山田兄弟の関係って? 実は「どついたれ本舗」の天谷奴零は、山田兄弟の親なのではないか……?という、驚きの考察があるのです!「まさかそんなことがあるのか!?」と驚いてしまうのですが、考察すればするほど納得できる部分が多すぎて、ファンはかなり驚いています、 三郎に会いたかった? はじめコミカライズにて、夢野幻太郎の編集長として登場した天谷奴零。 しかし実際は編集長なんかではありません。 その後中王区の東方天乙統女から「勝手なことをされては困る」と注意を受けていました。 しかしその後乙統女は「彼(三郎)に会いたい気持ちはわかる」との発言をしているのです。 なにか山田兄弟に関係があるのは間違いなさそうですよね。 数字 天谷奴零の誕生日は1月23日。 1,2,3と並んでいますが、これは山田一郎、二郎、三郎なのでは……?という説が濃厚です。 たしかにこんなに数字が並んでいるのは不自然。 特に123と並ぶ誕生日なのであれば、シンジュク・ディビジョンの伊弉冉一二三の設定であってもおかしくないくらいですよね。 しかし彼は6月22日。 あえて一二三ではなく、彼にこの誕生日を設定しているのはなにか意味があるのではないでしょうか。 しかも名前も「零(0)」ということで、山田兄弟と並べると「0,1,2,3」と並びます。 オッドアイ? ふだんはサングラスで目を隠している天谷奴零。 実はこれはオッドアイを隠すためではないかとされているのです。 山田兄弟は全員オッドアイ。 ここで彼がオッドアイであれば、かなり親子説が濃厚になってきます。 1度サングラスを外したシーンがあったのですが(コミカライズにて)、そのとき彼は片目を手で隠していたのです。 ここまで両目を隠されると気になります。 しかも見えている方の右目はトーンがはられておらず、色素がうすそう。 二郎の右目に近いようなカラーなのかもしれません。。 名前が…… 先程の「0」の数字の話にも繋がりますが、「天谷奴零」をローマ字表記すると「AMAYADO REI」。 これを並べ替えると、「YAMADA O」になるのです……。 山田零ですね。 これはかなり、説得力があるのではないでしょうか。 謎は深まるばかりです。 ちなみに天谷奴零のMCネームは「MC. MasterMind」。 一郎は「MC,BC(ビッグブラザー)」、二郎は「MC. MB(ミドルブラザー)」、そして二郎は「MC. LB(リトル・ブラザー)」です。 MCネームに「MC」とわざわざつけているのは、【ヒプマイ】キャラでもこの4人のみ。 (独歩なんて[DOPPO]とそのままです)この共通点の多さは、関係あるとみてほぼ間違いないのではないでしょうか。 声優さんの出身地が… オオサカディビジョンの声優さん3人のうち、天谷奴零を担当している黒田さんのみ、東京出身なのです。 他の2人は大阪出身……。 オオサカディビジョンだから、大阪出身の声優さんを起用していることは間違いないと思うのですが、そしたらなぜ黒田さんだけ東京出身なのか気になりますよね。 これはもともと天谷奴零は東京にいて、なにかの都合て途中でオオサカに行ったのではないかとされています。 ヒプマイ考察 その2 観音坂独歩と四十物十四の関係? 作中でもかなりの人気キャラである観音坂独歩と、ナゴヤディビジョンの四十物十四が、まさか兄弟かもしれない!?というような考察まであるのです。 これが本当だとしたら、かなりすごいことですよね!ここからもなぜこの2人が兄弟とされているのか、考察をみていきます。 独歩に年の離れた弟がいる もともとドラマパートにて、年の離れた弟がいる設定が明かされていました。 独歩は29歳、四十物は18歳です。 それも以前、独歩のセリフで「弟が受験に失敗したのも俺のせい、みんな俺の、俺の……」みたいなものがあったのです。 四十物は18歳の4月生まれということで、そのときが時期的に大学受験のシーズンにかぶってしまいます。 受験に失敗し、ミュージシャンになっている可能性も……。 瞳の色が似ている 完全に一致ではないのですが似ています。 これには驚きです。 一緒ですね。 誕生日も似ている 独歩が5月15日生まれ、四十物が4月14日生まれ。 うーん。。。 という感じですよね。 狙っているのかもしれません。 豚のぬいぐるみを大事にしている 四十物は友達が少なく、ぶたのぬいぐるみの「アマンダ」を大事にしている、という設定があります。 この友達が少ないというのも独歩と同じというところも気になるのですが、「ぶた」といえばヒプマイファンはハッとするのではないでしょうか。 ぶたといえば木島さんです。 独歩と同じシンジュク・ディビジョンの伊弉冉一二三の担当声優である木島隆一さんは、ブタが大好き。 ツイッターのプロフィールにも書いていますし、個人のニコ生番組のタイトルは「このブタ野郎!」(?)です。 一二三からのプレゼントなのではないか?など、いろいろささやかれています。 文豪・国木田独歩 独歩と同じ名前である文豪・国木田独歩の弟の名前は収二(しゅうじ)。 じゅうし、と似ています。 この考察はすごいですよね!かなり説得力があります。

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