1月初旬に中国・武漢市内の海鮮市場の関係者に感染が確認されて以来、約1か月で感染者は世界中に拡大しています。 今日は、今後の拡大が懸念される新型コロナウイルス感染症の一部の重症化に関係している可能性があるとされる、「サイトカインストーム」についてお話します。 ・新型コロナウイルス感染拡大の経緯 ・サイトカインストームとは ・サイトカインを投与するサイトカインカクテル療法は危険なのか? ・日頃からの健康管理が大事 ~予防法~ 【新型コロナウイルス感染拡大の経緯】 2019年12月31日 武漢で原因不明の肺炎 中国の武漢市内で原因不明の肺炎が広がっていると、世界保健機関(WHO)が中国当局から報告を受ける。 2020年1月7日 新型コロナウイルスと判明 武漢市の肺炎患者から、中国当局が新型コロナウイルスを検出した。 では、コロナウイルスの特徴とは 通常ウイルスは免疫力がまだ発達していない子供や、免疫力が衰えてきている老年者が発症しやすいと言われていましたが、どうも新型コロナウイルスは、普通のウイルスとは違うようです。 これまで確認された発症者は、20代~50代が多く、免疫力が比較的高い方が発症されています。 中国の発表によると、新型コロナウイルスによる死亡者は高齢者が多いとされていますが、先日は36歳の男性が新型コロナウイルスで亡くなりました。 先ほども書いたように、高齢者は免疫力が衰えているので理解できますが、免疫力の高い36歳で、しかも持病も持っていない患者がなぜ重症化したのでしょうか。 その原因として考えられているのが 「サイトカインストーム」 です。 【サイトカインストームとは】 私たちの体は、免疫細胞が病原菌やウイルスの侵入から守ってくれています。 そして、その免疫細胞に指揮命令を与え、コントロールしているのがサイトカインです。 サイトカインには炎症性サイトカイン(攻撃性)と抗炎症性サイトカイン(保護作用)があり、この二つが絶妙なバランスをとることで、病原菌やウイルスを退治し、自分の細胞を保護しています。 このバランスが崩れる、もしくはサイトカインが過剰に産生されることで、自分の細胞をも傷つけるような過剰反応を起こすことがあります。 つまり、自分の健康な細胞を攻撃してしまうということです。 これをサイトカインストームと言います。 一度サイトカインストームが起こると、急激に病状が悪化します。 肺にサイトカインストームが発症すると急速に呼吸困難に陥り、死亡する危険性が生じます。 また、重症化すると多くの臓器が障害を受け、多臓器不全に陥り、死亡した例も報告されています。 サイトカインストームは、発症予測が困難で、諸説はありますが、残念ながら今のところ確立された治療法はありません。 炎症性サイトカイン(攻撃性)を抑え、健康な細胞を傷つけることを防ぐことはできますが、そうすると、本来攻撃すべきウイルスへの効果も抑制されてしまい、結果、ウイルスが増えてしまうことになるからです。 【サイトカインを投与するサイトカインカクテル療法は危険なのか?】 当院では、サイトカインを使用した、脳卒中の後遺症治療をおこなっていますが、このサイトカインを使用した治療では、サイトカインストームを引き起こす危険はないのでしょうか。 当院で行っているサイトカインカクテル療法では幹細胞から抽出したサイトカインを投与します。 先ほどサイトカインストームの原因のひとつとしてサイトカインが過剰に生産されると書きましたが、サイトカインがいっぱいあると危険なのではと思いますよね。 サイトカインには、攻撃性のサイトカイン(炎症性サイトカイン)と保護性のサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)がありますが、幹細胞は再生及び修復、つまり組織の保護の役割を担っていますので、幹細胞から得られるサイトカインの大半は保護性のサイトカインになります。 つまり、保護作用が強まることはあっても、攻撃性が増すことはありませんので、安心して投与していただけます。 再生医療技術を活用した慢性期からの脳出血・脳梗塞後の後遺症治療(サイトカインカクテル療法) 【日頃からの健康管理が大事 ~予防法~】 今、私たちにできることは、十分な睡眠を取り、栄養のバランスが取れた食事で免疫力、体力を高め、感染しないようにうがい、手洗いを心がけ、予防することです。 また、ビタミンCは免疫力を高めますので、点滴でビタミンCを摂取したり、サプリなどを服用するのも1つの予防法です。 以下は国際オーソモレキュラー医学会が推奨しているサプリメント摂取量です。 子どもに対しては体重によって服用量を調整してください。 最初のサイドバー• デイクリニック天神 院長 有薗 久雄 HISAO ARIZONO 略 歴• 1992年 福岡大学医学部卒業 福岡大学病院麻酔科勤務• 1998年 日本麻酔科学会認定麻酔科専門医を取得• 1998年 福岡天神スキンケアクリニック院長• 2000年 聖心美容外科大阪院院長• 2004年 聖心美容外科名古屋院院長• 2006年 聖心美容外科札幌院院長• 2007年 聖心美容外科広島院院長• 2008年 聖心美容外科福岡院院長• 2009年 東京血管外科クリニック勤務• 2010年 米国アラバマベインセンター認定医• 2014年 東京下肢静脈瘤クリニック院長• 2015年 第一血管外科クリニック院長• 2017年 デイクリニック天神院長.
次の1月初旬に中国・武漢市内の海鮮市場の関係者に感染が確認されて以来、約1か月で感染者は世界中に拡大しています。 今日は、今後の拡大が懸念される新型コロナウイルス感染症の一部の重症化に関係している可能性があるとされる、「サイトカインストーム」についてお話します。 ・新型コロナウイルス感染拡大の経緯 ・サイトカインストームとは ・サイトカインを投与するサイトカインカクテル療法は危険なのか? ・日頃からの健康管理が大事 ~予防法~ 【新型コロナウイルス感染拡大の経緯】 2019年12月31日 武漢で原因不明の肺炎 中国の武漢市内で原因不明の肺炎が広がっていると、世界保健機関(WHO)が中国当局から報告を受ける。 2020年1月7日 新型コロナウイルスと判明 武漢市の肺炎患者から、中国当局が新型コロナウイルスを検出した。 では、コロナウイルスの特徴とは 通常ウイルスは免疫力がまだ発達していない子供や、免疫力が衰えてきている老年者が発症しやすいと言われていましたが、どうも新型コロナウイルスは、普通のウイルスとは違うようです。 これまで確認された発症者は、20代~50代が多く、免疫力が比較的高い方が発症されています。 中国の発表によると、新型コロナウイルスによる死亡者は高齢者が多いとされていますが、先日は36歳の男性が新型コロナウイルスで亡くなりました。 先ほども書いたように、高齢者は免疫力が衰えているので理解できますが、免疫力の高い36歳で、しかも持病も持っていない患者がなぜ重症化したのでしょうか。 その原因として考えられているのが 「サイトカインストーム」 です。 【サイトカインストームとは】 私たちの体は、免疫細胞が病原菌やウイルスの侵入から守ってくれています。 そして、その免疫細胞に指揮命令を与え、コントロールしているのがサイトカインです。 サイトカインには炎症性サイトカイン(攻撃性)と抗炎症性サイトカイン(保護作用)があり、この二つが絶妙なバランスをとることで、病原菌やウイルスを退治し、自分の細胞を保護しています。 このバランスが崩れる、もしくはサイトカインが過剰に産生されることで、自分の細胞をも傷つけるような過剰反応を起こすことがあります。 つまり、自分の健康な細胞を攻撃してしまうということです。 これをサイトカインストームと言います。 一度サイトカインストームが起こると、急激に病状が悪化します。 肺にサイトカインストームが発症すると急速に呼吸困難に陥り、死亡する危険性が生じます。 また、重症化すると多くの臓器が障害を受け、多臓器不全に陥り、死亡した例も報告されています。 サイトカインストームは、発症予測が困難で、諸説はありますが、残念ながら今のところ確立された治療法はありません。 炎症性サイトカイン(攻撃性)を抑え、健康な細胞を傷つけることを防ぐことはできますが、そうすると、本来攻撃すべきウイルスへの効果も抑制されてしまい、結果、ウイルスが増えてしまうことになるからです。 【サイトカインを投与するサイトカインカクテル療法は危険なのか?】 当院では、サイトカインを使用した、脳卒中の後遺症治療をおこなっていますが、このサイトカインを使用した治療では、サイトカインストームを引き起こす危険はないのでしょうか。 当院で行っているサイトカインカクテル療法では幹細胞から抽出したサイトカインを投与します。 先ほどサイトカインストームの原因のひとつとしてサイトカインが過剰に生産されると書きましたが、サイトカインがいっぱいあると危険なのではと思いますよね。 サイトカインには、攻撃性のサイトカイン(炎症性サイトカイン)と保護性のサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)がありますが、幹細胞は再生及び修復、つまり組織の保護の役割を担っていますので、幹細胞から得られるサイトカインの大半は保護性のサイトカインになります。 つまり、保護作用が強まることはあっても、攻撃性が増すことはありませんので、安心して投与していただけます。 再生医療技術を活用した慢性期からの脳出血・脳梗塞後の後遺症治療(サイトカインカクテル療法) 【日頃からの健康管理が大事 ~予防法~】 今、私たちにできることは、十分な睡眠を取り、栄養のバランスが取れた食事で免疫力、体力を高め、感染しないようにうがい、手洗いを心がけ、予防することです。 また、ビタミンCは免疫力を高めますので、点滴でビタミンCを摂取したり、サプリなどを服用するのも1つの予防法です。 以下は国際オーソモレキュラー医学会が推奨しているサプリメント摂取量です。 子どもに対しては体重によって服用量を調整してください。 最初のサイドバー• デイクリニック天神 院長 有薗 久雄 HISAO ARIZONO 略 歴• 1992年 福岡大学医学部卒業 福岡大学病院麻酔科勤務• 1998年 日本麻酔科学会認定麻酔科専門医を取得• 1998年 福岡天神スキンケアクリニック院長• 2000年 聖心美容外科大阪院院長• 2004年 聖心美容外科名古屋院院長• 2006年 聖心美容外科札幌院院長• 2007年 聖心美容外科広島院院長• 2008年 聖心美容外科福岡院院長• 2009年 東京血管外科クリニック勤務• 2010年 米国アラバマベインセンター認定医• 2014年 東京下肢静脈瘤クリニック院長• 2015年 第一血管外科クリニック院長• 2017年 デイクリニック天神院長.
次の2009-06-24 サイトカイン・ストームってなに? 1918年に世界的に流行したスペイン風邪は、 全世界で感染者6億人、 死者4000~5000万人に及んだといわれています。 感染者は15~35歳の若年層に集中し、死亡者の死因の多くは、ウイルスの 二次感染による急性肺障害によるものでした。 当時、インフルエンザウイルスに関する知識も研究技術も確立しておらず、なぜその様な強い病原性をもっていたのかは医学界でも永らく不明なままであり、また、当時流行したウイルスは現存していませんでした。 ところが、日本の研究機関「科学技術振興機構」が、1918年のスペイン風邪ウイルスの遺伝子を、公表された遺伝子配列を元に再構築し、人工合成することに成功しました 詳しくは。 この研究によって、スペインかぜで多くの人が死亡した原因のひとつに、ウイルスに対する自然免疫の異常反応 サイトカイン・ストーム であることが確認されています いったいどんな異常反応なのでしょうか 続きを読む前に、応援クリックお願いします まずは、用語の押えから サイトカインってなに? サイトカインとは細胞から放出されて、免疫作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用・細胞増殖や分化の調節作用など、特定の細胞に情報伝達するタンパク質の総称をいいます。 免疫とは、細胞内に異物が進入した際に、異物を非自己として認識し防御する働きのことをいい、 免疫機能を担う白血球・マクロファージ・好中球・リンパ球(T細胞・B細胞・その他)などの各細胞が共同作業を行う為の相互作用を司っているのがサイトカインです。 サイトカイン・ストームってなに? 体内に免疫を持たない新型ウィルスが進入すると、体内で過剰免疫反応を起こすことがあります。 サイトカイン・ストームとは、免疫系への防御反応としてサイトカインが過剰生産されアレルギー反応と似たような症状を起こし、最悪の場合死に至る作用のことをいいます。 免疫反応におけるサイトカインの役割 通常の免疫反応について、具体的に見ていきましょう。 マクロファージは異物(病原体)を捕らえて取り込み殺しますが、その際にT細胞に対して異物の種類を提示するという形で「警告」を発します。 T細胞はその警告に基づきB細胞に抗体生産を命じますが、その命令を伝えるのがインターロイキン IL-6 です。 ところがB細胞が充分量の抗体を作るまでにはタイムラグがあるので、マクロファージはその間のつなぎとして病原体を食い殺す作用を持つ好中球を呼び寄せます。 この際にもIL-6が働きます。 注目すべきは、これらはいずれも感染初期の反応であり、もし免疫反応が順調に働いているならば、IL-6は徐々にその役目を終え減少していくと考えられます。 ウイルス感染に対する免疫反応 ウイルスは細菌と異なり自分だけで分裂増殖できません。 何故ならウイルスとは遺伝子を蛋白の殻で包んだだけの存在であり、遺伝子に基づいて新たな体を作り出す機能を持っていないからです。 そこでウイルスが増殖する為には生きている細胞内に入り込み、自分の遺伝子を設計図として細胞に新たなウイルスを作らせる必要があります。 インターフェロン(INF)は、細胞に作用して、この「ウイルスの遺伝子に基づいて新たなウイルスを作る行為」をブロックする働きがあります。 したがって通常の免疫反応であれば、INFが増加し、ウイルスの増殖が抑えられることになります。 スペイン風邪における、いわゆるサイトカイン・ストームの発生 それではスペインかぜにおける過剰免疫反応 サイトカイン・ストーム の発生について見てみましょう。 スペインかぜでは、通常の免疫反応であれば、ウイルスが退治されれば減少するはずのインターロイキン IL-6 が増加し、ウイルスの増殖の抑制を促すインターフェロン(INF)が増加していることが実験からわかりました。 特に、生体内のIL-6濃度が感染局所 インフルエンザでいえば「肺」に当たる で異常に増加しています。 画像はさんからお借りしました。 ・ヒト由来インフルエンザウイルスと比較して、1918年のスペイン風邪ウイルス(1918)に感染したサルは、 a 一部のタイプI型のインターフェロン(ピンクの点線で囲まれた部分)の発現増加が見られない ・反対に炎症性細胞の一つである好中球などを刺激するIL-6(青の点線で囲まれた部分)は発現増加 ・ b インフルエンザウイルス感染に対する抗ウイルス反応に重要な遺伝子群(黄色の点線で囲まれた部分)は、発現増加が見られない(遺伝子発現量: 減少= 緑、変化なし=黒、 増加= 赤) サイトカイン・ストームによる肺の病状 では、サイトカイン・ストームが肺に起こった場合には、具体的にどういう状態になるのでしょうか。 肺の中は極めて細かい部屋(肺胞)に分かれており、その壁は血管が密集しています。 取り込んだ酸素と二酸化炭素を効率的にガス交換するため、血管と大気が殆ど直に接触しており、しかもその表面積を増す為に内側が細かく仕切られています。 IL-6が過剰増加すると、急性炎症反応を引き起こし、肺胞の内側に水分や好中球そのものや好中球の死骸などが溜まります。 したがって、その部位ではガス交換が出来なくなり、いわゆる「肺炎」を引きこします。 サイトカイン・ストームが発生するとこの状態が更に強く起こり、呼吸困難、最悪の場合は死に至ります。 a 正常なサルの肺 b ヒト由来のウイルスを接種したサルの肺 c d 1918年のスペイン風邪ウイルスを接種したサルの肺 画像はさんからお借りしました。 スペイン風邪で死亡したのが若年層なのはなんで? 以上の研究から、 「スペインかぜはなんらかの原因で体内にサイトカインストームが発生し、急性肺障害を引き起こして多数の死者を発生させた」というのは確かだと思います。 しかし、ここで疑問が残ります。 スペインかぜの死亡者が、通常のインフルエンザであれば死亡することのない15~35歳の若年層に集中したのはなぜしょうか よく引き合いに出されるのが、若年層ほど免疫が活発化しやすく、過剰反応を引き起こしやすいということですが、どうもすっきりしません。 一つの説として、当時感染者に使用されていた 解熱剤 NSAIDs:非ステロイド抗炎症剤系解熱剤 によって、サイトカイン・ストームが起きたという説があります。 アスピリンはスペインかぜが流行する3年前 1915年 から一般用薬剤として市販され急速に使用されるようになりました。 当時解熱剤として大量のアスピリンが使われたとされる記録があり、アスピリンを使用した人と使用しなかった人の死亡率は30倍もの差があるという調査もあります。 これが正しければ、当時第一次世界大戦中という状況を鑑みて、若い軍人などがインフルエンザ対策として多量のアスピリンを使用し、副作用としてのサイトカイン・ストームが起きたという仮説も立てられます 現在WHOではアスピリンの18歳未満への使用は制限。 いずれにせよ、本来ウイルスに対抗すべき免疫反応が過剰反応を起こし、自らの体を蝕むという皮肉な結果は変わりません。 生物が本来もつウイルス 病気 への抵抗力をいかに正常に発現させるか? 見えない敵に対抗する上で忘れてはならない視点ですね。
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